これは、同時のタイミングで起きたドル/円の急騰とユーロ/ドルの急落の動きです。
ドル/円 1時間足(急騰)
ユーロ/ドル 1時間足(急落)
なぜ、これが起きたかと言えば、7月5日(金)に発表された6月の米国の雇用統計※で非農業部門就業者数が22.4万人と予想の16.0万人を大きく上回り、米国の早期の利下げ期待が急速に後退したからでした。 (※米国雇用統計:米国の雇用状況を表した指標。為替市場に与える影響が大きく最も注目される指標です)
つまり、急激なドル高になったわけです。
確かに、ドル/円は、急激なドル高になって急騰(急上昇)していますが、ユーロ/ドルは急落しています。
これは、為替相場の表示方法に2種類あるからです。
ひとつは『自国通貨建て』といって、外国通貨1単位に対して、自国通貨がいくらという表示法。ドル/円、ドル/カナダ、ドル/スイスなどは、これにあたります。例示:日本の場合、ドル/円は1ドル=108円と表示されます。
もうひとつは、『外国通貨建て』といって、自国通貨1単位に対して、外国通貨がいくらという表示法で、ユーロ/ドル、ポンド/ドル、豪ドル/ドル、NZドル/ドルなどが、これにあたります。
したがって、ドル高になると、ドル/円は素直に上昇しますが、ユーロ/ドルは下落(ユーロ安ドル高)となるわけです。
ですので、FXでトレードする際には、どの通貨ペア(ふたつの通貨の組み合わせ)が自国通貨建てか、あるいは外国通貨建てかを覚える必要があります。
それを間違えて覚えてしまうと、思わぬ損失を被りますので、十分注意してください。
それでは、本題です。
なぜ、例のような指標発表があり、通貨ペアによって同時に相場が急騰あるいは急落したかです。
結論から言いますと、損切り(ロスカット)※が集中したためです。
(※損切り:投資家が保有している通貨ペアを売却、損失を確定して終了すること。)
ドル/円を例にとってお話すれば、この6月の米雇用統計発表までは、マーケットは米FRB(連邦準備理事会=アメリカの中央銀行)が、場合によっては、0.5%利下げするのではないかと、利下げ期待が盛り上がり、ポジションもドル売りに大きく偏っていました。 「参考」ドルを保有している状況、ドル買いのポジションは、「ドルロング」と言います。(ドル売りのポジションは「ドルショート」と言います)
米国で利下げの期待が盛り上がると、日米金利差の縮小が予想され、金利差からのドルの購入や下支えが弱まるため、ドル売りが強まりやすくなります。 (逆に米国金利が高くなる時期は、ドルが買われ易くなります。)
ところが、発表された米雇用統計の中でも、非農業部門就業者数が予想を大幅に上回り、これで利下げ期待が一気に後退しました。
こうなると、ドル売り(ドルショート)のポジションを持っているマーケット参加者は、できるだけ損失を限定させようと、我先にドル買いに走るため、相場が急騰するわけです。
ユーロ/ドルの場合は、やはり我先にユーロを売ってドル買いに走りますから、急落(ユーロ安ドル高)するわけです。
ですから、急騰・急落の場面を見たら、その裏では大量の損切り(ロスカット)が出ているとご理解ください。