損切りと利食いの目安・設定は?初心者も避けて通れない2つの決済について解説
FXのトレードは、新規エントリーと決済がセットです。エントリーしたら必ず、反対売買をしなくてはなりません。
反対売買というのはつまり、損失を確定させる「損切り」か、利益を確定させる「利食い(利確)」。FXはこれらを繰り返しながら収益をプラスに持っていくというものなので、損切りも利食いも、どちらもトレーダーの必須スキルです。
しかし、実際に資金を投じてポジションを持ってみると、どちらも非常に難しく感じるもの。
そこで今回は、トレーダーが絶対に避けて通れない、損切りと利食いの基礎知識について教えていただきました。
損切りに対する考え方|おかしいと思ったら素直に切る!
編集部:まずは、初心者が最初に直面する「損切りの難しさ」から教えてください。そもそも損切りのオーダーは、ポジションを持ったのなら必ず入れておくべきですよね?

水上:そうですね。相場には、想定していない不測の事態というのは常にあるはずなんです。それに直面したときに、命綱としてのストップロス(損切りオーダー)というのは入れておかないといけません。
編集部:何か突発的な事件やニュースなどで暴騰・暴落することもありますからね。
そういった「命綱としての損切り」については初心者も設定している人が多いと思うのですが、もっと日常的な損切りというか「自分でポジションを手仕舞いする」というのは苦手な人が多いと思います。
しかし、こういった損切りもやっていく必要がありますよね?

水上:ポジションを持った後に「どうもおかしい」と思ったら、ストップロスに頼らないことが大事だと思います。それこそ10ポイント(10銭)でも15ポイント(15銭)でもいいので、自分の手で切るということがすごく大事なんですね。

ストップロス頼みというのは、自分の見立てが合ってないことを認めながら「どうにかいい方向に行ってくれないか」という期待感だけで持ち続ける場合が多いですよね。それだったら自分が「まずい」と思った時点で切っていく積極性がないと無駄に損をすることになってしまいます。
編集部:おそらくみんな「自分で自分の損失を確定させる」というのが嫌なんですよね。その結果、「含み損を抱えたポジションを損切りできないまま放置してしまう」という状態になってしまうわけですが…

水上:そういった状態を俗に「布団をかぶってやり過ごす」とか「冷蔵庫に入れておく」とか言ったりしますけど、それをやることによって他の行動ができなくなってしまうんです。自分で自分を縛ってしまうんですね。

「自分が間違っていた」と認めることはそんなに重大なことではないんですよ。「相場を100%当てる」なんてことはあり得ないのだから、違うと思ったら素直に認めて、切っていった方が賢いと思いますね。
編集部:まさにその通りですよね。どんなに凄腕のトレーダーでも100%の確率で相場を当てるなど不可能なのだから、初心者ならなおさら損切りは必要ですよね。

水上:大事なことは「次に戦える体力を持つ」ことです。
たとえばストップロスを40ポイント離れたところに置いていたとき、それがついて40ポイント分の体力を落としてしまうくらいなら、それよりも手前で切っていく方が健全だし、「自分の体力を消耗させない」ということがすごく大事だと思います。
編集部:ポジションが不利になってくると「ストップロスがつかないように動かしてしまう」というのもよく聞く失敗ですが、当然ながらこれもダメですよね?

水上:動かすという行為自体、自分がうまくいってない、当たっていないことを自覚しているわけですよね?それを、ずらしてまでポジションを持つ意味があるかどうかということです。要するに、単なる延命措置ですよね。
編集部:おっしゃるとおりです。そのポジションに固執することで身動きが取れない状態になってしまうわけですから、単なる延命措置でしかありませんね。
ちなみに、ストップロスを入れておくラインの目安はどうすればいいのでしょうか?

水上:私がニューヨークにいたとき、上司に言われて、ある米系ヘッジファンドがファンドマネージャーにやらせているというやり方をやってみたことがあります。
それは「自分が勝ったトレード」だけを抽出して、ポジションを持ってから手仕舞いするまでにどのくらいアゲインスト(含み損)になったかを計算すること。これをやってみたところ、平均値が35ポイントだったんですね。

基本的に、儲かったポジションというのはそんなにアゲインストにならないんですよ。
35ポイントまで逆行してロスカットされるようなら自分の相場観が違っているし、ロスカットラインまで逆行しないなら相場観は合っている。勝つトレードというのは、そこまで逆行しないものですね。
そういう意味では、自分が勝ったトレードはどれくらいアゲインストになっているのかを計算してみるというのはすごく大事なことだと思います。
おそらく人によってそれほど大きくは変わらず、おおむね35ポイントくらいに収れんしてくるのではと思うのですが、やってみる価値はあると思いますね。
編集部:「損切りをした瞬間に相場が反転する」という現象も、なぜかよくある気がします。こういう経験をすると「損切りしなければよかった」などと思ってしまうのですが…

水上:それは結局、持ちすぎている場合が多いんですよ。ギリギリまで耐えて「これはもうたまらん」となったところがド底とかド天井になるのはよくある話です。もっと気軽に切ることが大事だと思うんですね。
これは経済予測などにも言えることで、実際の経済はさまざまな新しい要素が加わったり、あるいは要素がなくなったりしながら変質していきますよね。つまり、自分が当初考えた経済予測というのは現実とはどんどん乖離していくんです。

乖離していくのは当たり前のことなので、軌道修正をしていかないとさらに乖離がひどくなっていってしまう。そういう意味では、見直しというのは必ず必要で、相場でポジションを持っていても同じです。
現在のマーケットと自分の予測がどのくらいかけ離れているかをチェックして、見直していくことが大事です。
利食いにおいて「欲張らないこと」の重要性
編集部:では次に、利食いについて教えてください。よくある失敗例としては「利食いのタイミングを逃す」というものです。
「せっかく含み益が出ていたのに、利食いをためらっているうちに反転してしまった」というやつですね。こういった経験のある人は非常に多いのではないかと思います。

水上:利食いをためらわせるのは、「儲け損なう恐怖」ですね。
「もしポジションを閉じたあと、さらに相場が動いていったら『もっと儲かったのに』と後悔しそうだ」という。その恐怖があるために手仕舞いできなくなるんですよね。

ためらっているうちに相場のピークを見逃してしまって、今度は含み益が目減りしていく方向になって…。そこで決済するならまだいいんですが、そこでも手仕舞いをせず、結局「往って来い」になり利益がゼロになってしまったというのはよくあることなんですよね。
そういう意味では「足るを知る」ということが大事で、「もっと儲かるんじゃないか」という不安はどこかで断ち切らないと利益は確定できません。自分で自分の気持ちを断ち切らないと儲けは残せないんですよね。
編集部:本来、利食いというのは勝ちトレードなのだから嬉しいはずなんですが、なぜか不安や恐怖が伴ってしまうんですよね…

水上:そういう人にはまず「利食うことでどれだけ楽しいか」を知ってほしいですね。
利食うというのは楽しいことなんです。損したら辛いばかりですけど、利食いができればいろんな意味で励みになるので、トレードを楽しむ上で利食いというのはとても大切なことです。
編集部:「頭と尻尾はくれてやれ」という相場の格言もありますし、ほどほどのところで利食うことが大事ですね。

水上:要するに「欲張らない」ということなんですよね。頭から尻尾まで全部取りたいと欲張るんじゃなく、胴体部分の一番身が詰まっているところを取って利益が出れば十分じゃないかということです。
そもそも、全部を取りたいなどというのは儲かることに対する感謝がなさすぎますよ。儲かることがどれだけ幸せなことかわかっていない。損に慣れてしまうように、儲けに対しても感謝を持っていない人が多すぎるような気がしますね。
編集部:いやはや、耳が痛い話です…。

利食いの目安とは?慣れるために意識しておきたいこと
編集部:利食いのポイントを判断するコツはありますか?

水上:まず、何事にも「慣れる」ということが大事ですね。勝つ回数を増やしていくことによって、いろんな応用力が効いてくるんです。

「勝って当たり前」にならないと、過去に儲かったときの成功体験に縛られてしまって、利食えなくなってしまうんですよ。勝つことが恒常化することによって、利食いに対して割り切りができるようになるんですね。勝ち慣れていかないといけない。
欲が出て利食いをためらってしまうようではまだまだですね。もっと自然に、適当に利益が乗れば「ありがとう」と感謝して利食えるようになることが大事だと思います。
編集部:水上さんは基本的に「順張り」を提唱していますが、順張りトレードにおいても勝ち慣れることが大切ということでしょうか。

水上:そうです。例えば経験度数が少ないと「流れに逆らわず売りから入る」というのも怖くてなかなかできないんですよ。
しかし何度も売りで入る経験をしていくと、経験が多い分だけ売り慣れてくるし、そのときの利食いの感覚やリズムがわかってくるんですよね。
それがなぜできるようになるのかというと、経験を積んだからです。1回2回の経験だけでやろうとするのはあまりにも無理があるので、できるだけたくさんのトレードをすることが大事です。
編集部:「勝ち慣れる」というのは、例えば数ポイント(数銭)の勝ちでもいいのでしょうか?

水上:最初は数ポイントでいいんですよ。数ポイントの勝ち慣れから始まっていって、慣れてくれば10ポイント20ポイントと、経験することによって段々と度胸がついてくるので、ポジションを引っ張ることができるようになるんです。
どうもトレーダーは、机上の空論で判断する人が多すぎますね。自分の体を使ってフィジカルにやるのではなくて、「こうなるからああなるはずだ」と相場観を持ったりする。
実際に怖さを感じながらやってみて、「相場の流れに運んでもらって利食うだけなんだ」というのがわかれば、順張りの怖さはかなり減ると思うんです。

これは現場で実際にやっていかないとなかなか身につかないことだと思いますね。
編集部:ちなみに水上さんはどんなポイントで利食っているのですか?

水上:利食い点の決め方についてはいろいろな方法があると思うんですが、私はすごく感覚的です。見たときのレートが「いいレートだ」と思ったら利食っています。
自分の中に「いやいや、自分が考えていたところはもっと上だし、そこまでは行くでしょう」という気持ちがあったとしても、利食いそこなうと相場が反転して、なかなかその「いいレートだ」と感じたところまで戻ってきてくれないんですよね。
逆にいえば、感覚的に「いいレートだ」と思ったときに利食っておいた方が結果的に良かったことがすごく多いんです。
編集部:感覚というのは、それこそ経験を積まないと得られないスキルですよね。近道をしようとせず、時間をかけて経験値を積んでいきたいと思います。
ちなみに水上さんは、利食うときはすべてを決済しますか?トレーダーの中には「一部を残しておく」というやり方をする人もいますが。

水上:個人的には全部いっぺんにやらないと気が済まない方なので、部分決済というのはあまりしません。やはり「スパッとやめる」というのが大事だと思うんですよね。
それは先ほどの「儲け損なう恐怖」にも通じると思います。
部分決済というのは「もっと儲かるんじゃないか?」という考えによるものだと思いますが、利食おうと思ったのなら全部決済する方が、結果的にはいいんじゃないかなと思っています。
編集部:FX会社によっては「トレール注文」というのが使えるところもありますが、トレンド相場においては、そういった注文方法を使って利益を伸ばしていくというのはありですか?

トレール注文とは?
利食いポイントを相場の値動きに追従させて、動かしていくことができる注文。トレンド相場が継続しそうな場合に利益を伸ばすことができる。一部のFX会社で利用可能
水上:ありだとは思いますが、前提として知っておいてほしいのは「トレンドには必ず終わりが来る」ということです。含み益が出ているのに利食いをためらってしまう人というのは結局、「この相場が永遠に続く」と思っている人が多いんですよ。
でもトレンド相場というのは必ず終わりが来ます。そのときに利食っていないと、どれだけ大きな含み益も『絵に描いた餅』になってしまいます。
「相場には必ず終わりがある」ということを意識して、「ほどほどで終える」ということに慣れていくことが必要ではないかと思いますね。
編集部:損切りも利食いも、謙虚な気持ちが大事ですね。FXはまるで人生の縮図のようです…。
これからも、謙虚な気持ちを忘れずに精進していきたいと思います。今回もありがとうございました!

今回のまとめ
- 「おかしい」と思ったら自分の手で切ることが大切
- 欲が出て利食いをためらってしまうようではまだまだ
- 勝ち慣れていくことで利食いスキルも上達する
この記事の執筆者

エフプロ編集長
齋藤直人
SAITO NAOTO
略歴
紙媒体で約20年の編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。現在は株式会社キュービックのエディターとして、エフプロを中心に記事クオリティ向上に尽力中。