短期か長期か、どんなトレードスタイルを選べばいい?
FXのトレードは必ず新規エントリーと決済がセットですが、「決済するまでにどのくらいポジションを持つか」は人それぞれで、特にルールはありません。
エントリーしてから数分で決済する短期トレード派もいれば、数か月単位でポジションを持ち続ける長期トレード派もいます。
はたして、こういったトレードスタイルにはどんな違いがあるのか。初心者にはどんなトレードスタイルが向いているのか。今回はそんなテーマでお話をうかがいました。
スキャルピング・デイトレード・スイングトレードの違い
編集部:FXには、ポジションの保有期間によっていくつかのトレードスタイルがあります。
一般的には「スキャルピング」「デイトレード」「スイングトレード」などという分類がありますが、まずはそれぞれのスタイルについて解説していただけますか?

水上:まずスキャルピングについてですが、これはごく短期の薄利を重ねていく感じのトレードで、けっこう人気がありますよね。

リスクが低いということでやる方が多いようですけど、個人的にはちょっと効率が悪いんじゃないかと思っています。たしかに大きな損はしにくいかもしれないけど、あまり効率がいいとは思えません。
デイトレードは、スキャルピングよりもある程度大きな値動きを狙っていくというもの。ただしオーバーナイトはせず、ポジションは翌日に持ち越さないでその日のうちに決済するのが特徴です。
おそらくこのやり方がもっとも盛んだと思いますし、それなりに値幅を取れるし、一番いいんじゃないかと思いますね。
ちなみにトレードのやり方は順張りと逆張りがあって、私は常々順張りがいいと言っています。順張りでやった方がマーケットから受けるプレッシャーがなくて、短期的に利益を出せるという意味でも、順張りのデイトレードがいいんじゃないかと思います。

編集部:スキャルピングとデイトレードが、日をまたがずに決済するスタイルですね。
その一方、日をまたいで長期的にポジションを持つのがスイングトレードですよね。一般的に、スイングトレードというと数日~数週間くらいのイメージがありますが。

水上:スイングトレードとそれ以上の長期トレードというのは、トレードの特性として同じようなものだと思います。ポジションを持っている時間が2~3日か、あるいは1ヵ月2ヵ月かという時間差の問題で、実質的にはあまり変わらないと思います。
私もかつてポジションを2ヵ月くらい持ったことがあったんですけども、確かにこのやり方は当たると無茶苦茶に儲かるんですよ。その代わり、ものすごく疲れます。なぜかというと、相場には当然、上げたり下げたりがあるからです。
例えば上昇トレンドになると予想してロングのポジションを持っていたとしても、その中では当然、逆方向に行くことも多いわけですよね。そうするとものすごいプレッシャーを感じるし、それに耐えつつ2ヵ月もポジションを持つというのはものすごく疲れます。

デイトレードとかスキャルピングというのは疲労感は伴わないので、そういう面ではいいのではないかと思います。特に私は「利食い大好き方式」と言っているんですが、利食えるならどんどん利食っていこうというやり方をすると、ストレスが溜まらなくていいと思いますね。
編集部:それぞれ、狙っていく利幅としてはどのくらいのイメージでしょうか?

水上:スキャルピングはまぁ、3~10pipsくらいですかね。デイトレードなら30~50pips、場合によっては100pipsくらい。
スイングトレードでは短いもので300~500pips、長いものになると2000~3000pipsとかいう単位を狙っていくと思います。
編集部:狙う値幅が大きいものは魅力的に見えてしまいますが、利益の額はLot数や取引する回数によって変わりますし、あくまでも自分に合ったものを選びたいですね。

初心者に向いているのは、デイトレード・順張り・利食い大好き方式
編集部:初心者に向いているのはどれだと思いますか?

水上:私はデイトレードがいいかなと思っています。先ほども言ったとおり、順張りの「利食い大好き方式」ですね。
編集部:個人投資家のほとんどは、別に本業のある人だと思います。仕事が終わった後にチャートに向き合うといった感じで、時間が限られている人も多いと思いますが、そんな人に向いているトレードスタイルはどれでしょうか?

水上:スキャルピングも一つだとは思いますが、自分が自由になる時間でデイトレード的にやるというのもいいかと思います。やっぱり投機のコツとしては速攻・勝ち逃げだと思いますので、「早く入って早く出る」ことに徹するのが大事かと思いますね。
編集部:では専業トレーダーのように、比較的ずっとチャートを見ていられる人にはどんなトレードスタイルが向いているのでしょうか?

水上:これも結局は、「相場のタイミングをいかにつかむか」ということだと思うんですね。現在の相場には、1日の中で「わりと法則性に則って動いている時間」というのがいくつかあるわけですね。その時間に集中的にやるというのが効果的だと思います。
専業トレーダーではない人はその一部分をやるということになると思いますが、専業トレーダーも、1日の中で法則性がある時間帯に集中的にやるという繰り返しになると思います。

具体的に言ってしまうと、日本時間の朝10時前後、シンガポールが売ってくる時間というのがそうですし、ロンドンオープン1時間後くらいに売ってくるというのもそうです(※2025年5月時点での傾向)
そういうのはほぼパターン化しているので、そこに乗っかっていくという作戦はありますね。そういった海外投機筋の習性をよく見ておくっていうのが大事だと思います。以前も海外投機筋についてはお話しましたが、現在は売ることしかやっていないし、売る時間まで決まっているので、それに乗っかって波に乗るというのが大事なのではないかと思いますね。
ただし、時間が来たら必ず同じことをやってきて、同じ結果になるとは限らないので、違うと思ったらすぐに逃げる。逃げ足の速さというのも大事かと思います。
編集部:それぞれのスタイルについて、向いている人はどんなタイプだと思いますか?

水上:スキャルピングは、マメな人ですよね。
私がニューヨークにいたときの同僚で、台湾系のアメリカ人がいました。彼はスキャルピングをする、インターバンクの用語的に言えば「ジョバー」だったんですけども、何しろ1日中、売ったり買ったりを丁寧にやるんですよね。あのしつこさというのはすごいと思いました。
金曜日の午後なんて本当にマーケットが薄くなってしまうんですけど丁寧に丁寧にカバー取引をしていましたね。ですからスキャルピングをやるのであれば、そういった丁寧さがないとなかなか儲からないのではないかと思います。
編集部:スキャルピングというと、1日中ずっとトレードし続けているトレーダーのイメージがありますが、やはりそういう感じですね。

水上:デイトレードについては「自分を冷静に見られる人」が向いていると思います。日中の値動きでは、どうしても熱くなる場面というのはあるんですけど、それを客観的に見て行ける人でないと、なかなかデイトレというのは難しいと思います。

あとは工夫や観察することができないとだめですね。1日の中でも、そんなに無理をしなくても儲かるタイミングっていうのはいくつかあるんですよね。そんなタイミングを狙っていけるかどうかっていうのが大きいですね。
編集部:スイングトレードについてはどうでしょうか?

水上:スイングトレードは、ある意味で鈍感でないとやっていられないというか。さっきも言ったように1日の中でも上げ下げがあるので、いちいちそれに翻弄されていてはやっていられないですよね。ある程度のどんぶり勘定でいられる人でないと難しいと思います。

私がやっていたころは、損益も1000万円以上でしか見ていなかったですね。それより小さい額の損益のブレは見ていない。それくらいの鈍さがないとやっていられないのが長期のトレードです。
編集部:スイングトレードに関しては、スキャルピングやデイトレードとは違って「スワップポイント」という要素も入ってきます。これは考慮した方がいいでしょうか?


水上:個人の方はそれを気にしすぎているようにも思いますね。
相場には「上がるよりも下がる方が早い」という特性があるのですが、つまりドル円でいえばスワップポイントが支払いになるポジションでトレードした方が短時間に儲かるチャンスもあるのです。
ですから、スワップポイントが支払いになるポジションをあまりにも気にしすぎるのもどうかとは思いますね。
たとえば今、アメリカのCTAが、今年の2月くらいからずっと持っていた円買いのポジションの手仕舞いを始めてきていると思っています。
※CTA
「Commodity Trading Advisor」の略で、ヘッジファンドの一種。顧客から預かった金融資産を運用している
つまり彼らは1ヵ月以上、スワップポイントが支払いになる状態でポジションを持ち続けているんですね。プロと言われている人たちは、あまり金利を気にしないところがあります。
あまり金利を気にしすぎるとチャンスを失うところがあるので、そこに注意する必要はあるかと思います。
編集部:長期的なトレードは、世相や経済情勢の変化による影響も受けますよね?

水上:時代とともに変化は当然ありますね。例えばトランプ政権とバイデン政権っていうのでもまったく違うんですよね。トランプ政権の第1期のときは4年間でドル円の値幅は17円しかなかったのですが、バイデン政権になった途端に115円が一時162円近くまで上がった。

ものすごい大相場になったんですが、じゃあトランプ第2期は第1期と同じになるのか、それともまったく違ったものになるのか。それはある程度長いスパンで観察していかないとわからない部分もあると思います。
編集部:スイングトレードは1日中ずっとチャートを見続けるようなトレードスタイルではないので初心者にも向いていそうなイメージがありますが、これはこれで難しいところがありそうですね…。
では、自分に合うトレードスタイルはどのように見つければいいのでしょうか?あれこれと手を出すのは良くないですか?

水上:いろいろ試してみるのは自由だし、ある意味で痛い目に遭ってみるのもいいんじゃないかと思います。言葉でいくら言われても、実体験として痛みを覚えた方が「これは自分には向いてないんだな」というのがわかるので。
ただ経験的にいえば、何度も言いますが「順張りでのデイトレード」がいいんじゃないかなとは思いますね。
編集部:もし初心者が、どんなトレードスタイルでやればいいのか迷っているなら、まずは「順張りのデイトレード」から始めた方がいいですね!
もちろんデイトレードにも難しさはありますが、スキャルピングやスイングトレードよりは、トレードの基礎を身に付けやすいように思います。
順張りデイトレードで、まずはトレード経験を積んでいくことにします!
