ドル円 1時間足
1月20日月曜は、キング牧師生誕記念日(アメリカの祝日)で終日小動きでしたが、翌21日火曜、中国での新型肺炎の流行に絡んで香港株が急落し、これを受けて、リスク回避の円買い(※)からドル/円も急落しました。
リスク回避の円買いとは
- リスクが発生すると円を買うという慣行がマーケットにはあります。
しかし、下げたところではドル買いの抵抗も強く、反発となりました。
22日、改めて新型肺炎の感染拡大の報道を受けて、再びドル/円は下がると確信して売ったところが、またしても売り過ぎてしまい、ショート(ドルの売り持ち)の買い戻しが集中して急反発。こうした底堅さを受け、市場心理は再びドルに対して強気になりました。
しかし、これによってマーケットは下げたところを買おうとするようになったため、マーケットのポジション(市場参加者の持ち高・建玉)はロング(ドルの買い持ち)に偏ります。
これは、値動き分析(値動きで相場を分析する手法)のジリ安(ジリジリと下がる)という状況で、下がったところは買い、上がるのを待つということをマーケットの参加者が繰り返すため、いつになってもロングは減りません。むしろ下がれば下がるほど、ロング(ドルの買い持ち)が膨らんでいくということになりました。
このジリ安が、22日から23日にかけて続きました。
そして、心の支えにしていたサポートである21日の安値109.76円が切れたところで、ロングのストップロスが集中し、急落しました。
ワンポイント
- 損失を限定するための注文方法をストップロスと言いますが、目安となっている水準を割り込むと、一気に売り注文が膨らみ、大きく値を下げることとなります。
しかし、その後に下げ止まると、ドル/円は下がったら買いと見て新たに買ってくる強気のマーケット参加者もいるため、またロングのポジションが膨らんで(増えて)重くなり、109.50円近辺まで下げました。
この水準では、日本の機関投資家の大口の買いが入っていたもようで、下げ渋りました(なかなか下がらなくなる)。
ただし、これまで繰り返されてきた買い下がり(ジリ安)によって、マーケットのポジションはロングのまま。さらに買ってロングができたとしても、買い続けなければ上昇はありません。
売ってショートになれば潜在的には買い戻さなければなりませんので反発力の源泉となりますが、今回の場合は買っていますので反発力はありません。機関投資家の買いはあるので安値圏に停滞してしまいます。
しかし、ニューヨークでニューヨークダウが一時200ドル以上急落したことから、109.50円のサポート(下値抵抗線)を割り込み、ロングのストップロスが集中し、一時109.27円まで下げました。
これによりロングのポジションは大きく調整されました。
24日になると、今度は相場が下がると見て戻りを売ろう(上がってくるところを売る)としたため、マーケットのポジションはショートに偏ってしまい、売っても下がらず仕方なく買い戻すためジリ高(ジリジリと上がる)になり、ロンドンタイムまで反発となりました。
しかしニューヨークに入ると、新型肺炎への警戒感が再び強まって、リスク回避の円買いが再開。109.17円をつけ安値を更新しました。
このように、1週間を通してみれば「リスク回避の円買い相場」となりました。
しかし、その中にはドラマがあり、最初は積極的にリスク回避の円買いになりながらも下げきらず反発。そして下げがダメだということで買ったところが裏目になってジリ安になったことで、マーケットのポジションがロングになり、そして本来の下げの理由である中国の新型肺炎感染拡大への警戒感が強まり、ロングが投げておしまいという流れでした。
つまり、安全通貨としての円の位置づけは無視できないということです。
そして、そうした流れの中での買い下がり(下がっても買い続ける対応)がいかに危険かもお分かりいただけたかと思います。
大事なのは、今のマーケットの大勢(主流)が相場をどう見ているかを推理すること。そのためには、マーケットのポジション(市場参加者の持ち高・建玉)がロングあるいはショートになっているかをよく観察することです。
また、今のドル/円は、確かに日本の機関投資家の大口のオーダー(注文)が上にも下にも入りますが、相場の流れが強ければ絶対的な壁にはならないことも、今回語られていると思われます。