ドル/円 1時間足
前週金曜、新型肺炎の感染拡大懸念が深まり、ニューヨークダウは今年最大の下げとなる600ドルを超える下落となり、ドル/円は108.31円まで急落しました。
こうした状況下、2月2日日曜、中国人民銀行(中央銀行)は、18兆円規模の市場への資金供給*を表明しました。
中央銀行による市場への資金供給
株式市場が不安定になる、あるいはなりそうになると、資金を市場に通常よりも大幅に供給することにより混乱の鎮静化を図ります。
今回の場合、中国人民銀行はニューヨーク株式市場の急落によって中国も連鎖することを恐れ、中国市場のパニックを抑えるために、旧正月明けとなる2月3日の前に意向を表明しました。
3日月曜、それでもシドニータイムに、市場は108.32円近辺まで売り込んできましたが、買いは引かず、押し戻されました。
後日談になりますが、月曜、世界最大の公的年金基金である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、ドル買い円売りに出ていたことも、ドル安を抑えたと言われています。
そうして、売りは出ながらもドル/円は上昇し、さらに4日零時に発表された1月のISM製造業景気指数*が50.9と予想の48.5を上回ります。
好不況の節目である50を半年ぶりに回復したことから、一時108.80円まで上昇しました。
ISM製造業景気指数
ISM非製造業景況感指数とともに、米国の景気先行指標として注目されている指標。300社以上の製造業の購買・供給管理責任者を対象に、各企業の受注や生産、価格など10項目についてアンケート調査を実施しています。
その日は世界的な株高と米長期金利上昇を受けて、ほぼ一本調子に上げ、一時109.54円をつけました。
5日水曜は、上げもいったん一服し、ロンドンタイムには調整的な(買いすぎを調整しようとする)ドル売りも出て、いったん下落しかけます。
しかしニューヨークタイムになり新型肺炎のワクチン開発に関する報道やADP雇用者数*、ISM非製造業景況指数*が予想を上回ったことも加わり、再び買いが優勢となり、一時109.85円をつけました。
ADP雇用者数
- 民間部門の雇用統計。米雇用統計の非農業部門雇用者数(NFP)の民間部門との相関性が高いとされていて、雇用統計の先行指標として注目されています。
ISM非製造業景況指数
- 企業の購買担当者へのアンケートを基に作成する非製造業における景況感を示す指数。
6日木曜、中国政府が米国からの輸入品の一部の関税を引き下げると発表したことが好感されて買われ、一時110.00円をつけました。
7日金曜、1月の米雇用統計*が発表され、非農業部門雇用者数(NFP)が、予想を上回ったことから一時110.00円近辺まで買われましたが、上値はかなり重く反落、今度は下を攻めて109.53円まで下げましたが、下も堅く、結局109.78円で週を終えました。
米雇用統計
- 米国労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標。失業率、非農業部門雇用者数(NFP)、建設業就業者数、製造業就業者数、小売業就業者数、金融機関就業者数、週労働時間、平均時給など10項目からなります。
月曜から木曜までの相場は、新型肺炎の感染拡大懸念から売り上がっては、下がらないため買い戻されるという、いわゆるジリ高相場。
金曜には、かなり「110.00円突破」が意識され、買い先行になったことで、振り落としに遭った(上がらず投げた)相場でした。
しかし、下は109.50円もつかず、やはり、基本的には底堅い相場だと見ています。
今年に入り、米軍部隊による2名のイラン要人の殺害、それに対するイランの対米報復攻撃、そして今回の新型肺炎の感染拡大と、リスク回避の円買い*につながる事態が1カ月余りの間に繰り返し発生してきました。
リスク回避の円買い
- リスクが発生すると安全通貨である円を買うという慣行がマーケットにはあります。
しかし、そうした事態の発生にも関わらず、ドル安円高は一時的で、むしろ反発の方が大きくなってきています。
2015年からの三角保ち合い(もちあい)は、すでに相当狭まってきており、近い将来上か下へブレイク(突破)する可能性がありますが、今の買いの強さから見れば、上方向に突破する可能性が高いものと見ています。
三角保ち合いとは、上値を徐々に切り下げ、下値を徐々に切り上げながら、相場が煮詰まっていくこと。
相場が動こうとするエネルギーが溜まっていき、どこかのタイミングで上か下に大きくブレイクするのが一般的ですので、トレード的にも重要となります。
上方向への変化を意識しながら、トレードのチャンスをうかがっていくのもいいでしょう。
ドル/円 月足