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「コモディティ価格」って何?投資をする上で知っておくべきこととは

為替相場は、世界経済のさまざまな要素と複雑に絡み合っています。中には相関関係にあるものもあるので、投資をする際は、その関係性を知っておくと重要な情報となるはず。

そこで今回注目したのは「コモディティ価格」と為替の関係。

お話をうかがったのは、この分野の研究をしている岡山大学の酒本准教です。「そもそもコモディティとは?」というレベルから、やさしく解説していただきました。

お話をうかがった人

酒本隆太准教授

岡山大学経済学部

酒本隆太准教授

略歴

慶應義塾大学卒業、英国ヘリオット・ワット大学大学院博士課程修了(PhD)。大和住銀投信投資顧問株式会社、ワイジェイFX株式会社を経て現職。ワイジェイFX株式会社時代は取引データやリスク管理手法の研究、市場動向の調査を担当。Journal of International Money and FinanceやJournal of International Financial Markets, Institutions and Moneyなど国際金融分野の査読付き雑誌で論文を発表している。現在、慶應義塾大学産業研究所の客員研究員を兼任。

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原油価格と産油国通貨の相関性とは

編集部:まずは初歩的なところから教えてください。金融業界では「コモディティ」という言葉をしばしば目にしますが、これは何を指しているのでしょうか。

酒本:一言で言うと、「商品先物」として取引されているものです。具体的に何かというと、原油や天然ガスなどのエネルギー、銅や鉄鉱石などの工業用金属、金やプラチナなどの貴金属、あるいは木材や小麦などまで含め、商品先物として取引されているもの。

それらを総称して、「コモディティ」と呼んでいます。

編集部:それらのコモディティと為替相場には相関性があると聞いたことがありますが、具体的にはどのような関係なのでしょうか。

酒本:コモディティには天然資源に分類されるものが多いので、産出できる国は限られています。つまり資源を産出できる国の経済と強く関係しておりまして、例えばオーストラリアなどは鉄鉱石や石炭をたくさん輸出しています。

そういった資源の価格が上がるとオーストラリア経済が潤い、オーストラリアドルに対する需要も高まって為替も強くなる傾向があります。

またニュージーランドは乳製品を多く輸出しているので、乳製品の価格が上がるとニュージーランド経済が好調になり、ニュージーランドドルが強くなります。

編集部:なるほど、シンプルでわかりやすいですね。FXで豪ドルやニュージーランドドルを取引する際は、それらの価格が重要な情報になりそうです。

では原油はどうでしょうか。原油の産出国といえば中東の国々というイメージがありますが、中東の国々は為替市場で取引されていませんよね?

酒本:良い質問ですね。私も以前、サウジアラビアの通貨を調べたことがあるのですが、為替との関係は見られませんでした。そもそも中東の国々はペッグ(自国通貨と米ドルの為替を一定に保つ制度)していたりするので、原油の値動きとはあまり関連が見られません。

ただし、産油国の中には為替が自由に値動きする制度を採用している国々もあるんです。

代表的なところがカナダとノルウェーですね。この2国は、原油価格と通貨が非常に強く関連しています。

編集部:一般的な日本人のイメージからすると、その2国が産油国というのは意外かもしれません。ノルウェーも産油国なんですね。

酒本:そうですね、北海油田がありますので。日本ではノルウェーという国はさほどなじみがないかもしれませんが、通貨研究をしている人間にとってはけっこう注目されている国の一つです。

カナダドルと原油価格の相関性については、このグラフを見てもらえるとイメージがつかめると思います。

WTI原油先物価格

出典 Federal Reserve Bank of St. Louis
※原油価格はWTI原油先物価格

編集部:これはすごいですね。2015年(グラフの真ん中)のあたりの値動きは、紙を二つ折りにして写したかのように同じカタチに見えます。ちなみにこれは、原油価格とカナダドルのどちらが先に動いているのでしょうか?

酒本:統計的には、少しだけ原油の方が先に動いているという研究もあったりします。日次ベースで見ると、少しだけ原油の方が先に動いて、その後に為替が動いているのではないかと。

日本では「カナダドルと原油価格の相関性」といってもピンと来ない人が多いかもしれませんが、このグラフを見ると連動しているのがわかりやすいですよね。

コモディティ価格をどう活かす?

編集部:では、原油以外のコモディティについてはどうでしょうか。金や銀などの貴金属は、為替とどのような関係がありますか?

酒本:金や銀は、リスク性資産に対してヘッジ効果があると言われています。例えば高金利通貨は、世界の景気が良いときにはキャリートレード(スワップポイント狙いのトレード)としていいパフォーマンスの出る通貨かもしれません。

しかし高金利通貨のトレードがうまくいかないときは、金や銀の価格が上がりやすくなります。私の研究でも、高金利通貨のキャリートレードがうまくいかなかった月のデータを取り出し、そのときの金や銀のパフォーマンスを見るとプラスになっていました。

ですので、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を多様化するときは、例えば高金利通貨を持ちながら金や銀のETFなどを持っていると、高金利通貨のパフォーマンスが良くないときに、ポートフォリオ全体のダメージを和らげてくれる効果があると思います。

編集部:基本的に、金や銀以外のコモディティは好景気のときに値段が上がり、金や銀などは不景気のときに値段が上がるというイメージで良いでしょうか?

酒本:そうですね。世界経済が好調であれば原油もどんどん使うでしょうし、材料もどんどん使って製品を作るでしょうからね。反面、金や銀はあまり好景気ではないときに値段が上がりやすい傾向があります。

金や銀は、多少工業用にも使われているものの、財産価値・貴金属としての価値がありますから。どちらかというとマーケット、特に株のマーケットがうまくいっていないときに、金や銀に資金が流れやすいですね。

編集部:なるほど。投資においてはポートフォリオをどう組むかが重要だと言われますが、そういった逆相関の関係にあるものをうまく利用すると良さそうですね。

ちなみに現在(インタビュー時:2021年3月上旬)だと、コモディティ相場にどのような傾向がありますか。

酒本:今は景気回復期待によって、金や銀を除いたコモディティは上昇傾向にありますね。原油価格も上がってきていますし。

編集部:となると、世の中にこういう期待感が続けば資源国の通貨も上昇していくかも…という仮説が立ちますね。もちろんあくまでも仮説ですが。

酒本:そうですね。「これからワクチンが行き渡って、経済活動が普通に行われるのではないか」という期待から、コモディティ価格と資源国の通貨が連動しているという状況だと思います。

編集部:逆に、コモディティ価格が値上がりしているのに、資源国通貨が連動しないケースというのは考えられるのでしょうか?

酒本:おもしろい質問ですね。オーストラリアなどはあまり考えられない状況かもしれませんが、例えばブラジルレアルや南アフリカランドなどの新興国ですと、政情が先進国ほどは安定していないので、連動しない可能性があるかもしれません。

コモディティ価格というのは世界経済や世界経済の先行きを反映した株式市場の影響が強く出るので、株式市場が荒れている状況だと、コモディティ輸出国の通貨はあまりパフォーマンスが良くないとは言えると思います。

編集部:いずれにせよ、FXをやるならコモディティ相場もチェックしておくと、有力な情報になりそうですね。

ちなみにこれは、普通に検索して相場を見るというレベルのチェックで良いのでしょうか。

酒本:そうですね、まずはそれでいいと思います。ただ、デイトレードのように短期でのトレードにどれだけ役に立つかはわかりません。

もう少し長期でトレードする人にとっては有益な情報になるのではないかと思います。

編集部:短期で完全に同じ動きをするというよりは、中長期的に見ると相関性が確認できる、というイメージですよね。トレードの情報源に活用する際は、自分自身のトレードスタイルがどうか、という部分にも注意を払いたいと思います。

ちなみに現在、酒本先生がコモディティの中で注目しているものは何かありますか。

酒本:金価格には注目しています。金価格は金利と逆相関の関係なんですよね。

安全な資産としては、一つは金や銀などの貴金属 があり、もう一つは預金などがあると思うのですが、金利が上がると金や銀を持っているよりも預金した方がお得感が増しますよね。

今はアメリカの金利が上がり始めていて、それに連動して金の価格がかなり下がっています。これはどこまで下がるのかなと、個人的には注目していますね。

編集部:なるほど。世界経済のさまざまな関連性に注目すると、おもしろそうですね。

例えばFXをギャンブル感覚でトレードするよりも、コモディティ、為替、株価、金利など、いろいろな要素に注目した方が情報源が増えますし、何よりトレードがおもしろくなりそうだということがわかりました。

本日はありがとうございました。

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