相場の格言から学べることとは?
FXや株などを含め、相場の世界にはさまざまな「格言」があります。
その発祥をたどれば江戸時代にまでさかのぼるものもありますが、驚くべきことにこれらの格言は、時代を隔てた現代でもなお通用し続けています。
相場の性質を知りトレーダーとして成長していくうえで、こういった格言を知っておくのも非常に大切。今回はそんな「相場の格言」について解説していただきました。
有名なもの14選について解説
編集部:今回はさまざまな相場の格言を取り上げて、それぞれに解説をいただきたいと思っております。比較的有名なものをピックアップしたので、ぜひ解説をお願いいたします。
数も多いので、どんどんいきましょう。まずは以下の格言からです。

相場の格言その①
人の行く 裏に道あり 花の山

水上:これは「人と同じことをするのではなくて、人とは違った見方・考え方をすることが大事ですよ」ということですね。
他の意味としては「大勢の意見に流されず、自前の意見を持つことが大事」ということもあると思っています。これは私のすごく好きな格言で、事あるごとに思い返しているという感じですね。
編集部:そもそも相場には「ポジションが偏ってくるとその逆に動く」という性質がありますし、大勢と同じ見方をしていると、うまくいかないことが多いですよね…。
ただ重要な点として、決して「逆張りをしろ」というわけではなくて、「誰かの相場観に流されずに自分自身で考えることが大切」ということですよね。僕もあらためて、肝に銘じておきたいと思います。

相場の格言その②
休むも相場

水上:この格言はまさにそのとおりですね。相場への向き合い方というのは「買う」「売る」「休む」の3つから成り立っているんですよね。この「休む」というのが非常に大事で。
相場を張るというのは非常にストレスのかかることですから、どうしても精神的な疲れを受けるわけです。そのままだと考えが偏ったままになってしまうし、やはり休まないと新鮮な考え方もできません。ですから、休むというのは非常に大事ですね。
編集部:休むことの大切さは、連載第4回でも解説していただいていますね。読者の皆様もぜひこの機会に読み返してみることをおすすめします。

相場の格言その③
・相場は明日もある
・Tomorrow is another day

水上:「Tomorrow is another day」というのは、映画『風とともに去りぬ』の中に出てきたセリフとしても有名です。
主人公のスカーレットはそれまでにいろんな苦労をしてきたけれども、「明日はまた別の日だ」ということでこのセリフを言うんですが、これは相場にも通じるものがあるんですね。
ある日の相場で勝った負けたと一喜一憂したところで、また次の日が来れば別の日なので。気持ちを切り替えていくというのはすごく大事ですね。
編集部:負けたときはもちろんですが、勝った後の戒めの言葉としても重要ですね。僕は勝つと調子に乗ってしまうことがよくあるので…

相場の格言その④
すごい売り(すごい買い)、よくよく聞けばロスカット

水上:これは相場の急落・急騰を表している格言ですね。私はこの言葉があったからこそ、急落・急騰の理由がわかりました。
例えば急騰をしているとき、外から見れば「なんでこんなに急上昇するんだろう?こんなに高いところをどうして買えるんだろう?」と思うかもしれませんが、ポジションを持っている本人はそれどころじゃないんですよね。
もう必死になって、値段じゃなく「とにかくポジションをスクエアにすること(ロスカットすること)」自体が目的になって取引しているわけですから。
編集部:「相場はなぜ動くのか」については連載第1回でも解説していただきましたが、この格言はその本質を表しているかもしれませんね。

相場の格言その⑤
相場の天底は、人智では推し量れないもの
水上:相場の天井や底を推し量ろうとするのは、要するに逆張りの発想なんですよね。
「このあたりが天井だろうから売りで入る」とか、「このあたりが底だろうから買いで入る」という発想は逆張りです。結局、どこが天井や底になるかはわからないわけですから。
編集部:そうですね。「そろそろ天井や底だろう」と思ってエントリーしても、まだまだ相場の流れが止まらないというのはよくある失敗ですね。

水上:じゃあどうすればいいのかといえば、上がるのなら順張りで買えばいいし、下がるのなら順張りで売っていけばいい。「逆張りには大きなリスクがある」ということを逆説的に言っている格言だと思いますね。
相場の格言その⑥
頭と尻尾はくれてやれ

水上:「天井から底まで、できるだけ大きく値幅を取りたい」という欲望は皆持っているとは思います。しかし、この欲望のせいで一番おいしい胴体部分を減らしてしまうというのはよくある失敗です。
端から端まで取りたいなどと考えるのではなく、ある程度儲けたなら感謝して利食うことが大事という格言ですね。
編集部:欲張って利食いをためらい、利益を減らしてしまったという失敗は何度も経験してるので、僕にとっては耳が痛い格言です…

相場の格言その⑦
もうはまだなり まだはもうなり
水上:これは、潮時の難しさを表した格言ですね。
「もう天井(底)だろう」と思ったときは大概、まだ継続するもの。一方で「まだトレンドは続くだろう」と思ったときは大概、もう天井(底)だったりするものです。
もし自分の気持ちの中に「もう」という思いがあったなら、本当に「まだ」がある場合が多いですし、「まだ」と思えば「もう」のことが多いんです。ですので、この格言は自分に問いかけることの大事さを伝えているものだと思いますね。
相場の格言その⑧
・The trend is your friend(トレンド イズ ユアフレンド)
・落ちてくるナイフはつかむな

水上:これらはちょっとニュアンスが違うのですが、まず「トレンド イズ ユアフレンド(トレンドは友達)」というのは、トレンド相場であれば順張りでいきましょうということですね。
上がるのなら買えばいいし、下がるのなら売ればいい。結局はその順張りのやり方が一番いいんじゃないかというのを端的に示した言葉だと思います。
それに対して「落ちてくるナイフはつかむな」というのは逆説的な格言ですね。落ちるナイフをつかもうとしたら手が傷だらけになるように、下落している最中に買うというのは非常に危険ですよというのを表した言葉だと思います。
編集部:逆張りを戒める格言というのはいくつもあるんですね。格言が多いということは、やはりリスクが高いことの証左でもありますね。

水上:買うとしたら落ちている最中ではなく、リバウンドし始めたときがいいと思います。
相場の格言その⑨
・買いにくい相場は高い
・押し目待ちに押し目なし
水上:上げ相場のときは、なかなか安く買えないんですよ。高いところを買っていかなきゃいけない相場も多いんですよね。
逆に言うと、上がるだろうと思ってるときに安く買えてしまう方が感触としては嫌ですね。
「押し目待ちに押し目なし」というのも似たような言葉で、要するに買いたいと思って押し目を待っていても、実際には押し目らしい押し目もなくて、上がってしまうものです。
そのくらい、勢いのある上昇相場は入るのが非常に難しい。もう、目をつぶって高いところをつかんでいかないと波に乗れないこともあります。
編集部:エントリーをためらっているうちにどんどん上がり続けて、ようやく決心してエントリーしたら天井だった、という失敗もよくあります。決断の早さもトレードには重要ですよね…

相場の格言その⑩
相場に連れをつくらず

水上:これはまさにそのとおりで、相場を張るというのは孤独なものです。
例えば仲間と相場観を共有して、その意見が一致すると100万の味方を得たような気持ちになると思いますが、それは裏を返せば「大勢意見の側になっている」可能性があります。
やはり大勢意見というのは、そんなに当たるものではないですよね。相場においては少数意見だからこそ当たるということが多いので、傷をなめあうような関係を持つよりは、孤高の人でいなければいけない部分はあると思います。
ただ誤解していただきたくないのは、トレーダー同士が横のつながりを持つのは、すごく大事なことです。烏合の衆にならないためには、お互いの意見を出して、違いを認め合うことが大事です。
編集部:トレードスタイルや相場観などは人によって異なるけれど、日本人同士で情報交換をして「お互い頑張ろう!」という関係性がいいですね。

相場の格言その⑪
投機を成す者、楽悲を戒む
水上:トレーダーたる者、勝ったと言ってはしゃぎ、負けたと言ってふさぎこんでいるようではいけませんという格言ですね。やはり、淡々とトレードができるようにならないと、なかなか相場の世界で生き延びることはできません。
編集部:個人的に「FXは9割メンタルではないか?」と思うことがあります。そのくらいメンタル面での失敗が多いんですよね(笑)
勝ったり負けたりでいちいち感情を揺さぶられないようにするためには、とにかく場数を踏んで慣れていくことが大事ですよね。これからも相場の世界を生き延びて、成長していきたいと思います…!

水上氏の好きな格言は?
編集部:ここまで10個以上の格言について解説していただきましたが、この中で特に水上さんが好きな格言は何かありますか?

水上:「人の行く 裏に道あり 花の山」というのはすごく好きですね。やはりトレードというのは知恵比べだと思うんです。
だから自分のオリジナルの考えを持つこと、創意工夫していくことがいかに大事かというのをこの格言は言っていると思います。
あとは、格言というか私の言葉なのですが「相場はこれ一回限りじゃない」ということ。まぁ「Tomorrow is another day」と同じようなことですね。
要するに、相場というのは1回限りじゃないんだから、あまり執着してしまうのではなくて、メリハリをつけることが大切です。今日がダメだったら潔くやめて、また翌日にリフレッシュして新しく考えることが大事ですね。
編集部:値動きの本質に関する格言と、相場を生き抜くうえで必要な格言、という感じですね。たしかに、どちらも重要な格言に感じます。
今回挙げていない格言で、何か好きなものはありますか?

水上:「足るを知る」という言葉も大切ですね。これも非常に大事で、多くのトレーダーと話をしていると、結局みんな「もっと儲けたい」という思いによって失敗しているんです。
含み益が出ているときに、「もっともっと」と言っているうちに相場が反転してしまって、結局チャラになってしまったとか。やはり、ほどほどで止められるかどうかは非常に重要です。最後にもう一つ挙げるなら「儲けることよりも儲けを残す方が難しい」ということ。
相場で瞬間的に儲けてみても、その利益というのは砂金のようなものなんですね。砂金を手のひらに乗せていても、指の間からサラサラとこぼれていってしまうように、儲けるよりも儲けを残すことの方が難しいんです。

勝ったあとにどう自分を制御していくかがとても大事なんです。
編集部:いやぁ、それにしても相場の格言の世界は奥が深いですね。インジケーターなどの勉強をすることも大事ですが、こういった格言が示唆していることもたくさんある気がします。
時代によって変わること・変わらないことの両方を知って、相場に臨みたいと思います。
本日もありがとうございました!

今回のまとめ
- トレードは知恵比べ。自分のオリジナルの考えを持つことが大事
- 相場は1回限りじゃない。メリハリをつけることが大事
- 儲けるよりも儲けを残すことの方が難しい
この記事の執筆者

エフプロ編集長
齋藤直人
SAITO NAOTO
略歴
紙媒体で約20年の編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。現在は株式会社キュービックのエディターとして、エフプロを中心に記事クオリティ向上に尽力中。