投機筋vs本邦機関投資家の戦い
ドル/円 4時間足
前週1月3日、イラン要人2名の殺害によって中東の地政学的リスクが高まり、1月6日のシドニー市場では、リスク回避の円買い(※)からドル/円の売りが強まり、一時107.76円近辺まで売られました。
※リスク回避の円買い:リスクが発生すると安全通貨とされる円が慣習的に買われます。
しかし、日本の機関投資家の「(ドルが)下がったら買い、上がったら売り」の方針は変わらず、ドルを買い支え、108円台に反発しました。
1月8日、今度はイランが報復として、イラクにある米軍基地2か所をミサイルで攻撃。あらためてリスク回避の円買いが殺到し、107.65円まで突っ込みます。
しかし、またしても日本の機関投資家が買い支え、相場は108円台に戻しました。 さらにトランプ大統領がイランに対する武力行使を否定したことから、ドルの買い戻しが殺到し、109円台に乗せました。
先週末からドルの下方向を散々攻めて失敗した投機筋は、「売りがだめなら買い」とばかりに109円台を買い上がり、10日に発表される12月の米雇用統計を手掛かり(きっかけ)に、昨年11月からの強い上値抵抗線である109.65-75円近辺を突破しようとします。
日本時間10日午後10時30分に発表された米雇用統計は、予想よりは弱かったのですが、それでもかまわず買い上げようとし、発表前後に一時109.69円をつけました。
しかし、上値の重さは変わらず。例の「下がったら買い、上がったら売り」の日本の機関投資家の売りが引かなかった(撤退しなかった)もようです。 結局、小緩んで109.50円での越週となりました。
1月3日からの動きを振り返ってみれば、二つのことがわかります。
新年相場は投機筋の仕掛け
まず、やはり新年相場は、投機筋の仕掛けの相場だということです。 先週通してみても、「売りがだめなら買い」と節操はなく、場当たり的になっていることがわかります。
新年早々の相場には、欧米投資家のような一方向へのフロー(資金の流れ)がありません。
なぜなら、欧米投資家は1月に方針を検討し、実際に動き出すのが2月からだからです。 そのため基本的には、売れば利食いか損切りのために買わなくてはならず、買えば利食いか損切りのために売らなくてはならない投機筋ばかりのマーケットとなるため、節操のない動きになります。
もうひとつわかることは、「下がったら買い、上がったら売り」の日本の機関投資家の存在は、やはり無視できないということ。
結局、それによって投機筋は翻弄され、相場はタイトな(狭い)レンジに収まっているわけです。
今回、高値となった109.69円、つまり109.65-75円付近は、昨年11月以来の強力な上値抵抗線であり、その裏には日本の機関投資家の存在が極めて大きいと思われます。
ワンポイント!
- 上値の抵抗線レベルは、相応の売り圧力が強まります。一方、下方の支持線レベルには買い圧力が出てくるため、トレードの際には利食いや損切りなどの目安として意識しておきたいところです。
ドル/円 日足