失敗を糧にできる人は何が違うのか?
「FXを初めてから一度も失敗をしたことがない」という人はおそらく皆無でしょう。すべてのトレーダーは、必ず失敗を経験しています。
しかし、失敗を成長につなげることができるか、失敗を繰り返して退場してしまうか、明暗が分かれてしまうのも事実です。
そこで今回は、FXにおいて「成長できる人とできない人」をテーマにお話をうかがいました。
成長できる人の特徴とは?
編集部:いきなりですが単刀直入にお聞きします。FXをやっていれば誰しも失敗はすると思いますが、それを糧にできる人とはどんな人なのでしょうか?

水上:失敗を絶対に忘れないというハングリーさ、闘争心を持っていることが大事ですね。

そして、同じ失敗をしないようにすること。一度の失敗は糧になるのでいいのですが、同じ失敗を二度やったらそれはもう気のゆるみだと思うくらいでないといけません。
編集部:いきなり厳しい回答ですが、やはり生半可な気持ちでは成長できないということなのでしょうね。

水上:あとは「勝って当たり前」という姿勢になれるかどうかが重要です。
投資家は不思議なもので、普通の貯蓄とかに関しては「利息がつくのが当たり前」という感覚があるのに、投資に関しては「負けて当たり前」と考えている人が非常に多い。
そうではなくて「勝って当たり前」にならないとだめです。その辺は非常に大事な姿勢だと思っています。

編集部:それは「負けトレードをいっさいしない」ということではなくて、利益をしっかり残せるようにならないとだめだということですよね。

水上:そうですね。それで生計を立てるくらいのつもりになれば、たまたま勝ったくらいでは生計を立てられないですよね。勝って当たり前、利益を残して当たり前の姿勢になれるかどうかが大事だと思います。
編集部:同じ失敗をしないようにするには、具体的にどうすればいいでしょうか?

水上:たとえば反省ノートの活用などがあるかと思います。「トレード日記」という人もいますが、私は「反省ノート」と言った方がいいのではないかと思っています。

私自身はそれをやっているのかといったらやっていないのですが、為替ディーラーをやっていた頃、同僚の一人が「反省ノートでずいぶん救われた」という話をしていました。
編集部:水上さんがやっていない理由は何なのでしょうか?

水上:失敗を繰り返さないために大事なのは、「二度と繰り返さないぞ」と強く念じる心なんです。私の場合は、ディーリングデスクで「この負け忘れてなるものか」と心に刻んでいました。
編集部:記録をつけるのはあくまでも手段であって、目的ではないということですね。

水上:そうです。ノートに書くこと自体が目的になってしまったらダメですね。大事なのは「痛みをどう覚えておくか」であって、ノートに書いたことが免罪符になってしまうのなら意味がありません。
同じ失敗を繰り返すというのは、やはり心に甘えがあると思います。自分に厳しくないとうまくいかないですね。もし反省ノートを書くとしたら、根気よく続けること。三日坊主にしないことが大事です。
編集部:FXを学び成長していく方法としては「座学と実践」に分けることもできますが、どちらが大事だと思いますか?

水上:これはやはり実践というか、実際に戦う「実戦」が一番大事だと思います。数多くの戦いの経験をすると、当然ながら痛みも覚えるし喜びも覚えます。成長するためにはそういった実体験が必要です。

座学でいくら頭の中で考えても、戦場に出れば予期せぬことがいくらでも起きるんですよ。そういったものをどう乗り越えていくかは経験がものを言います。
最近はそういった時間や労力のかかるものを飛ばして結果だけを得たいという人も多いですが、経験を積むことはとても大事だと思いますね。
ストイックさを持つ一方で大切なこと
編集部:やはり成長するためにはある種のストイックさが必要なのだなというのがわかりましたが、それ以外に大切なことは何でしょうか?

水上:成長できるトレーダーに共通しているのは、諦めないこと、好奇心を持つこと。あとはやはり「楽しんでいること」が大切ですね。
成長できない人というのは、その裏返しになりますが、諦めてしまう。好奇心がない。楽しんでいない。強制的にやらされている感覚が強いと、続かないと思いますね。

編集部:何事も、悲壮感の漂う状態だとうまくいかないものですよね。

水上:楽しんでいると、逆境を逆境と思わなくなり、苦労を苦労と思わなくなるんですよ。
私自身、ロンドンに転勤になって半年くらいのスパルタ教育を経てトレーダーになったんですが、ひとたびトレーダーになってみればむちゃくちゃにおもしろかったんですね。
そうなると、放っておいても動くわけですよ。「人を動かす」というのはとても難しいものですが、本人がおもしろくなってしまえば勝手に動くんですよね。
個人トレーダーの世界にはマネージャーという存在がいないのですが、マネージャー的な立場で考えるなら、自分自身のやる気を出して儲けてもらうためには、動機付けをしていくことがすごく大事じゃないかと思っています。
こういった動機付けの一つとしては、私のメルマガ会員さん同士での交流会なども挙げられると思います。
編集部:かつてエフプロ編集部でもトレーダー交流会を開催したことがありましたが、そのときにも水上さんのメルマガ会員さんには多数参加してもらいましたね。
みなさん楽しそうに情報交換していましたし、確かにこういった交流をするとトレーダーとしてモチベーション向上につながるでしょうね。


編集部:ただ「楽しむことが大切」とはいっても、負けトレードばかり続いていたら楽しめません。そもそも勝たないことには楽しめないですよね。

水上:いろんな人に聞いてみると、「勝てているとき」っていうのは誰しもあるんですよ。評価損益上で利益が出ている状態ですね。しかし、せっかく勝てていたのに欲が出て「もっと儲けてやろう」と思ったところから逆回転が始まるんですよね。
利益が減ってしまうだけならまだいいとして、利益がゼロになってしまう、あるいはマイナスにしてしまうことが起きている。
ですから、評価損益上で勝つことと利益を残していくことっていうのは別なんですよね。「足るを知る」っていうことが非常に大事じゃないかと思うんですよね。
編集部:ちゃんと利益確定をして利益を積み重ねていたとしても、負けトレードが続いたときに熱くなってしまって、いつの間にか利益の大半を吹き飛ばしてしまう…なんてこともあります。

水上:そうですね。セミナーの参加者から「コツコツドカンなのですがどうしたらいいでしょうか」という質問が出たこともあります。
「コツコツドカン」とは
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コツコツと積み重ねてきた利益を、1回の負けトレードでドカンと失ってしまうこと
そういう人も、コツコツと儲けたものを元にもっと儲けようと思った結果、トレードが雑になってしまうケースが多い。儲かったときは、いったん止める勇気も必要なんですよね。
編集部:手元の資金が増えてくるとトレードが雑になるというのは僕も経験があります。そして、負けた分を取り戻そうとしてどんどん雑になるという悪循環に陥るんですよね…

水上:FXは、儲けることよりも「利益を減らさないこと」の方がはるかに難しいんです。利益というのは砂金のようなもので、指の間からサラサラとこぼれていってしまう。

これをこぼさないようにするためには、勝ったときにはいったんやめて他のことをやるくらいでないといけません。
あと「このチャンスを逃したら次はない」といった考え方もやめた方がいいです。チャンスはいくらでも来るんだから、目先の利益はしっかり確定していくことを覚えない限り、いくらいろんなことを言っても利益は残りません。
編集部:今回のお話を振り返ってみると、成長するためにはストイックである必要がありつつ、その一方で心の余裕を持つことも大切という感じがしますね。
自分に厳しく、かつ楽しんで取り組めるように自己マネジメントをしていくことを心がけたいと思います。
今回もありがとうございました!

今回のまとめ
- 同じ失敗を二度と繰り返さないと決意する強い意志が大切
- 反省ノートも有効だが、書くことが目的にならないように注意
- ストイックさを持つ一方で「楽しむこと」も大切
この記事の執筆者

エフプロ編集長
齋藤直人
SAITO NAOTO
略歴
紙媒体で約20年の編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。現在は株式会社キュービックのエディターとして、エフプロを中心に記事クオリティ向上に尽力中。