ドル/円 1時間足
17日月曜、日本時間午前8時50分に発表された日本の昨年10~12月期GDP・速報値(※)は、前期比年率マイナス6.3%という大幅な悪化でした。
GDP
- 国内総生産のこと。国の成長度を測る代表的な指標。一般的に、四半期ごとに発表され、速報値とその後半月後ぐらい後に出る確定値からなります。
しかし、マーケットの反応は、「日本のGDPが悪いからリスク回避の円買い」とばかりにドル売りで入ってきて109.72円をつけましたが、さすがにそれには無理があり、その後はジリ高に。ニューヨークタイムには、109.96円まで上昇しました。
とは言っても、1日の値幅は24銭と限られました。
18日火曜、シドニータイムに「米アップル社、新型肺炎の感染拡大の影響で売上高が減少」との報道をきっかけにまた売りが強まり、109.66円まで下落しました。
しかし、下げもそこまででジリ高となり、ニューヨーク市場に入って発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数(※)が12.9と予想の5.0を大きく上回ったことを受け、一時109.94円まで上昇しました。
ニューヨーク連銀製造業景気指数
ニューヨーク連邦銀行が発表するニューヨーク地区の製造業の景況感を示す指標で、マーケットでは結構注目されています。
ニューヨーク連邦銀行は、米国の12の地区連邦銀行のひとつで、唯一為替介入権を持っている地区連銀です。
しかし、1日の値幅は、この日も28銭と限られました。
そして迎えた19日水曜、世界は一変します。
ドル買いの兆候は東京の10時頃からありましたが、ロンドンが入ってきた(ロンドン市場がオープンする)16時頃から、ロンドン勢(ロンドンの投機筋)から大量のドル買いが出ました。
買い方は、何しろ量をこなしたい(大量に買いたい)というゆっくりとした買い上げでした。
買いは、ロンドンタイムに次いでニューヨークタイムも続き、翌日20日4時台に111.59円の高値をつけて、いったんの終了を見ました。
買いの原因については、いろいろな憶測が飛びました。
たとえば、新型肺炎の感染拡大でリスク回避の円買いを仕掛けていた海外投機筋がドルが下がらないので買い戻したというものや、世界最大の年金運用機関である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が米国債購入に伴ってドルを大量に買ったとか諸説入り乱れましたが、本当のところは今も定かではありません。
ただ言えるのは、けた違いのドル買いが出たこと。それだけは間違いありません。
20日早朝のシドニータイムから東京オープン前後にかけて、日本の輸出企業のドル売りや、投機筋の値ごろ感(この辺で売っていいかな?という感覚)の売りも結構出たようですが、11時ごろから再び買いは強まり、ロンドンタイムには112円台に乗せ、さらにニューヨークに入り112.23円の今週の高値をつけました。
21日金曜になり、東京タイムは112.00前後で推移していましたが、ロンドン勢は上がつかえているのを見逃さず売り仕掛けをし、買いが引いたこともあって、あっという間に111.49円近辺まで下げました。
しかし、111.50円にかなり大きな買いオーダー(注文)があったようで、ロンドン勢はそれを売って大きくショートになった(売り過ぎた)ものの下げ切れず、いったん、112.03円近辺まで買い戻されました。
ワンポイント
ロンドン勢が売ってショートになる
買いオーダーを売るということは、売ったロンドン勢はショート(売り持ち)になるということです。
ですから、売り持ちを解消する(=スクエアと言います)ためには、ロンドン勢は買い戻さなければなりません。そのために、相場が反発します。
そして、ニューヨーク勢(ニューヨークの投機筋)が入ってくると、新型肺炎感染拡大懸念が強まり、ニューヨークダウが売られて始まったこともあって、再びドル売りが強まります。
さらに、23時45分に発表された2月の米PMI(※)が好不況の境目である50を下回ったことから、売りは一層強まり、瞬間的に111.47円がつきましたが、やはり111.50近辺には依然として相当大きな買いがあり、押し戻されました。
PMI
- 購買担当者指数。製造業やサービス業の購買担当者を対象にするアンケート調査により、景況感を先行的に見る指数です。
ニューヨークダウも、米長期金利も下げていたため、反発も限られ、結局、111.57円での越週となりました。
月曜火曜の20数銭の値幅とは打って変わり、水曜は1円72銭、木曜は1円09銭、そして金曜は71銭とスケールの大きな相場に変貌しました。
先週(2月10日の週を振り返って)でも、「レンジ相場がかなり狭まってきたら、トレンド相場への転換が近いことを一般に示す」と申し上げましたが、まさにこのタイミングが今週来たのだと見ています。
トレンド相場になると動きがダイナミックになるので、相場のスケールを大きく見る必要があります。
またトレンド相場での逆張りは、「瞬間芸としてはいいものの基本的には大変危険」だということも忘れないでください。
なぜこのタイミングで大量の買いが出たのかはわかりませんが、あくまでもそれはきっかけであって、動き出すエネルギーはすでに溜まっていたと見るべきかと思いますので慎重な対応が推奨されます。