ドル/円 1時間足
前週3日金曜に発表された米雇用統計(※)は、非農業部門雇用者数がマイナス70.1万人と予想マイナス10.0万人をはるかに超す悪い結果でした。
その割にはマーケットはもみ合い方向感のない相場が続きましたが、ニューヨーク時間午後になり、大きくドル売りで仕掛けたビッグプレーヤー(大手の投機筋)がいたもようです。
米雇用統計
- 米国の雇用状況を示す指標で、大変注目されています。
失業率や非農業部門雇用者数、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数などの業種別雇用者数、週平均労働時間、平均時給などからなりますが、特にマーケットでは、非農業部門雇用者数が注目されています。
しかし、6日月曜の早朝。トランプ大統領が新型コロナウィルスの感染に対して楽観的な見通しを示したこともあって買いが強まると、金曜に大きく売ったビッグプレーヤーが下落予想を断念した様子。
東京の朝8時頃から大挙して買い戻したようで、ドル/円は108円半ばから109円台乗せまで急上昇しました。
月曜の東京オープン前後には、こうした唐突な相場の急上昇がけっこうあります。
何が何やらわからない上昇にマーケットは困惑しますが、その舞台裏は、こうしたビッグプレーヤーの「金曜の仕掛けと月曜の手仕舞い」によることが多いです。
特に米雇用統計が発表された金曜~翌週月曜の間で起きることが多いのですが、その理由は、月曜の東京オープン前後はマーケットに厚みがあり、手仕舞いやすいからです。
月曜の東京オープン前後に脈絡なく相場が大きく動いたら、裏にはそうした動きがあると見てまず間違いはありません。
その後、ロンドンに入り、スペインやイタリアなどでの新型コロナウィルスによる死者数が鈍化傾向にあると報道され、さらにドル/円は買われ、一時109.38円の高値をつけました。
7日火曜、買い過ぎたのか反落となり、一方で今度は売り過ぎたのか反発するなど、もみ合いを続けました。
8日水曜も、108円台後半を中心にもみ合いが続きました。 9日木曜、レンジ相場(一定の値幅の中を往ったり来たりする相場)が、続きました。
ところが、ニューヨークに入り、発表された週次の米新規失業保険申請件数は過去最多だった前週とほぼ同じ660万件となったことから売りが強まり、108.22円の安値を付けました。
10日金曜、東京時間は、108.58円までのいったんの反発を見たものの、再び売りが強まります。
一時108.32円をつけたあと、この日、欧米は、イースターのグッドフライデー(※)で主な株式や債券、原油、金などの市場が休場となったため、為替も実質的に動かなくなり、結局、108.46円での越週となりました。
イースターのグッドフライデー
- グッドフライデーはイエス・キリストが十字架にかけられて処刑された日で、イースターは3日後に復活した日。
つまり、キリストの復活を祝う最も重要な祝日。
週を通してレンジ相場になりましたが、この週に限らず、4月のドル/円相場はレンジ相場になりがちです。
市場に投機筋しかいないためです。
4月は、市場に一方向のフロー(資金の流れ)を作る生命保険会社などの機関投資家、輸出企業などの実需にとって新年度が始まる月。
ここで注意しなければならないのは、新年度が始まったからと言って、すぐに機関投資家や実需が動くわけではないということ。
彼らは4月に新年度の方針を検討するので、実際に動き出すのは、4月末までに方針決定した後の5月になってから。つまり4月に市場にいるのは投機筋ばかりです。
投機筋には、宿命があります。
買ったら、必ず利食いか損切りのために売り戻さなくてはなりません。
売ったら、必ず利食いか損切りのために買い戻さなければなりません。
4月、フローを作る機関投資家や実需が市場にいないとなると、いるのは売ったり買ったりする投機筋だけ。
そして相場は上げたり下げたりを繰り返すことになります。
実際、今月に入ってからの動きを見ますと、4月1日に106.93円まで突っ込んだ翌日には反発し、6日の109.38円まで上昇。そして翌日7日から反落気味となり、9日木曜に108.22円。
10日金曜は安値圏といった具合で、単に蛇行を繰り返しているに過ぎません。
つまり方向性がなく、ポジションが一方に偏るとその逆にしか動いていないという、実に典型的な投機筋のみの相場になっています。
したがって、機関投資家や実需が新年度方針を決定する4月末までは、この蛇行運動を繰り返すものと見ています。