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【第14回】日本人個人投資家層の「円魔(えんま)」とは?|水上紀行氏に聞く!為替相場を生き抜くための基礎知識

この企画の趣旨

為替相場は戦場のようなもので、損失を出してやめてしまう人も多い非常に厳しい世界。だからこそ初心者には、FXを真面目に学ぶ姿勢が大切です。為替ストラテジストの水上紀行氏に「相場を生き抜くための基礎知識」を解説していただく連載企画です。

お話をうかがった人

水上紀行profile

講師 為替ストラテジスト

水上紀行

MIZUKAMI NORIYUKI

略歴

1978年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。 1983年よりロンドン・東京・ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 現在、外国為替ストラテジストとして雑誌・テレビ・ラジオなどで活躍中。 著書に『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』(すばる舎)、『FX常勝の公式20』(スタンダーズ)、『知識ゼロでも1時間で稼げるようになるFX入門 2018』(スタンダーズ)などがある。

http://www.banya-mktforecast.jp/

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日本の個人投資家「円魔」とは?

水上さんの呼びかけで誕生した、日本の個人投資家のニックネームがあることをご存知でしょうか。

それは「円魔(えんま)」。

この「円魔」である我々には、どんな強みと弱みがあり、どんなトレーダーを目指すべきなのでしょうか。今回はそんなテーマでお話を聞きました。

公募と投票で決定した「円の魔物・円の守護神」

編集部:聞くところによると、「円魔」というニックネームは水上さんの呼びかけによって誕生したそうですね。誕生の背景を教えてください。

人のシルエット

水上:かつて、日本の個人投資家の愛称としては「ミセス・ワタナベ」というものがありました。

「ミセス・ワタナベ」とは?

    2000年代、為替市場において影響力を持ち始めた日本の個人投資家層に対して、海外投機筋がつけたニックネーム。

    当時のトレーダーには主婦層も多かったことや、「ワタナベ」が海外でもよく知られる日本の姓だったことから名づけられたと言われている。

確かに以前は、この「ミセス・ワタナベ」という愛称に近い投資家もいたのですが、最近は性別・年齢に関係なく多くの人が市場に入ってきている。そういう意味では実態を現していない部分がありました。

そのため、2022年にXとメルマガを通じて「日本の個人投資家を現す、いいネーミングはないですか」と呼びかけたんです。そこで案を募集して投票も行ったところ「円魔(えんま)」が選ばれたということなんですよ。

おわかりになるとおり閻魔大王をもじったものですが、意味合いとしては「円の魔物」「円の守護神」といった感じでしょうか。

外国人から見れば得体の知れない、「いったい彼らは何者なのだろう?」と気味の悪さを感じさせるようなイメージがあって、いいネーミングなのではないかと思います。

円魔のイラスト

編集部:そうですね、なんだか強そうなイメージがありますね。

人のシルエット

水上:ただ、そんな強そうなネーミングから始めたのはいいものの、それに見合う実力が日本の個人投資家にあったか?でいうと、今振り返ってみるとなかったですね。

ほとんどの人が逆張りをやっていたし、海外投機筋から攻められていること自体も理解していなかった。そういう実態があったので、この愛称を定着させていくのは少し時間を置いて考えなきゃいけないなと、最近までずっと思い続けてきました。

編集部:そもそもの話ですが、日本の個人投資家に力はあるのでしょうか?為替市場において個人の力など、たかが知れていると思うのですが…

人のシルエット

水上:確かに、1人で考えればそうなんですが、今の個人FXというのは2022年の日銀の調べによると1京2000兆円の取引高があると言われています。かなり巨大化しているのは事実ですね。

ただ本人たちにはその自覚がまったくないし、多くの人がまだ逆張りをしていて苦しい思いをしているのが実情です。

編集部:個人投資家は海外投機筋に対してどのような戦い方をすればいいのでしょうか?

人のシルエット

水上:やはり、真正面から戦ったら対抗はできないと思うんですね。例えばシンガポール勢が瞬間的に2億ドルとか3億ドルをぶち込んで売ってきたりすると、いかに個人投資家が巨大化してきているといっても耐えきれません。

日本の個人投資家は多くが逆張りをするので、海外投機筋が売ってくると買ってしまう。そしてものすごいプレッシャーを受けて、結局は投げてしまっています。

これを順張り方式にすれば、何のことはない。猛威をふるっている奴に乗っかって、抵抗なく運んでもらって、利益確定して離脱すれば何の傷も負わないんです。

編集部:この連載において、水上さんは一貫して順張りの有効性を訴えていますよね。下がってくるとつい買ってしまう、日本人のそんな癖は改めていくべきですね…。

その他に日本の個人投資家の戦い方としてはどんなものがあると思いますか?

人のシルエット

水上:私が好きな例え話に「ベトコンの戦術」というのがあります。

ベトナム戦争のとき、アメリカ軍が戦闘機から爆弾を投下して北ベトナム軍に大きな損害を与えていたのですが、それに対して「ベトコン(北ベトナム軍のゲリラ)」がどのような対抗措置を取ったのかという話です。

小銃しか持っていなかった彼らが最新鋭戦闘機に対して何ができたのかというと、まずはよく観察をしたんですね。すると、実は戦闘機が飛んでくる空路が毎回同じであることを発見した。

コンピューター制御によって毎回同じ空路を通って戦闘機が飛んできて、爆弾を投下しているというのがわかったんです。

そこで彼らは、戦闘機が飛んでくる空域の中に四角をイメージして、その中に銃で一斉射撃をしたらどうなるか?ということをやってみたんです。やってみたら実際に戦闘機を撃墜することができて、アメリカ軍を悩ませたと言われています。

空のイメージ画像

この話で何が言いたいのかというと、個々の力は微々たるものでも、知恵と工夫で戦えるということ。個人投資家にも「弱者ゆえの強さ」があるのです。

似たような話としては、日本ミツバチの「熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)」という戦い方があります。

ニホンミツバチの画像

日本ミツバチは、体が何倍も大きなスズメバチに対してどのように戦うのかというと、耐えられる温度の差を利用するんですね。日本ミツバチはスズメバチよりも高い温度に耐えられるので、これを利用してスズメバチを取り囲んで温度を上げて、熱で殺してしまう。

こういった、知恵と工夫による戦い方が日本勢にできることではないでしょうか。

編集部:はたして日本勢にできるでしょうか?

人のシルエット

水上:現在(2025年7月時点)、ドル円に参入していたシンガポール・ロンドン・ニューヨークの中で、シンガポールとニューヨークの2つが離脱していっているんですよ。

ニューヨーク勢については、自爆での退場です。ポジションを持ったまま週末越えをして、米中の貿易協議の結果ドル高円安になったことで大きな損害を出し去っていったようです。

シンガポール勢については、現時点では以前のようにトレードをしなくなっているんですね。彼らは常にドル円で売り続けるということをやり続けてきましたが、それをパタッとやめている。

おそらくこれは、トレードの効率が相当悪かったことが理由ではないかと思います。ベトコンの戦術や熱殺蜂球のように日本勢が頑張った結果ではないでしょうか。

編集部:海外投機筋は、日本の個人投資家のことをどう捉えていると思いますか?

人のシルエット

水上:おそらく眼中にもないか、あるいはいいカモとしか思っていないと思います。

しかし今回シンガポールがいなくなったところを見ると、ドル円についてはかなり手こずったのではないでしょうか。おそらく彼らの発想としてはもっとイージーに、自分たちの好きなようにできると思っていたら、意外とそうならないわけですから。

彼らとしてはドル円は120円まで落ちると思っていたのに、140円を割るのもしんどい状況になり、特に4月以降はレンジ相場になってほとんど動かなくなってしまった。

ドル円のチャート

(↑ドル円の日足チャート。2025年1月から下げ続けてきたものの、一瞬だけ140円にタッチしたところで反転。7月中旬くらいまではレンジ相場、7月下旬からは上昇中)

彼らにとって東京市場は、バブルが崩壊してメガバンクが4行しかなくなって、8~9割くらいは実需と個人投資家層しかいなくなったという認識しかないでしょう。そんな東京市場なら赤子の手をひねるように自分の手中にできると思っていたら、意外に抵抗を受けている。それどころか、売りで攻めているのに逆に円安になっていくわけです。

彼らも末期的症状だなと感じたのが、経済指標の発表時です。例えば日銀が利上げせず据え置きを決定したときに、彼らは損切りで買い戻していたんですね。このとき、いったんは買い戻すものの悔しいのですぐにまた売ってきたりしていたんですよ。

このことを私は「ネバーギブアップショート(NGS)」と名付けているのですが、恒常的にこれが起きるようになってしまった。日々、買い戻してはすぐに売るということを繰り返していた挙句、ぱたっと止めたという印象の方が強いですね。

そういう意味で、かなり日本の個人投資家層は健闘したと思います。やはり円というのは日本人にとってはホームカレンシーなわけで、ホームの強さというのは大きいですね。

編集部:では、日本の個人投資家の弱みとは何だと思いますか?

人のシルエット

水上:やはり逆張り癖ですよね。逆張りに固執して、ロスカットされても次から次へと逆張りが出る。

ヒロセ通商の注文情報を見ていると、ストップロス(損切り注文)が多く入っているところまで相場が動いて、多くのトレーダーが損切りに遭っても、またすぐに逆張り注文が湧いてくるんですよね。これは本当に怖さを感じるくらいです。

編集部:ロスカットされているということは、日本人の資産が海外投機筋に吸い取られていることでもあり、これは国益を損なっているとも言えますね。

人のシルエット

水上:日本は今、かなり国力の後退が激しいですよね。GDPもドイツに抜かれ、近いうちにインドに抜かれて5位になるのではとも言われています。

ただそれでもまだ個人の金融資産は2200兆円もあると言われており、これは海外から見れば垂涎の的なんです。

ですからこれを吸い取られるのではなく守らなくてはならない。守らないと、結局自分たちがジリ貧になっていくだけなので、トレーダーは儲かるようにならないといけません。

編集部:日本の個人投資家は、本当に「個人」投資家で、あまり横のつながりがないような気がします。「熱殺蜂球」になるためにはそこも課題ですよね。

人のシルエット

水上:私のメルマガの会員さんと話していて痛切に感じるのは「FXをやっているのは周りには秘密にしています」という人が多いことです。要するに、周囲に話したら「あんないかがわしいものに手を出しているのか」という評価を受けてしまうと。

それ自体がおかしい話なのですが、ともかく「私はこれで稼いでいるんだ」と胸を張れるようになるためには、まずは同好の士が集まって交流するというのがすごく大事なことなのではないかと思うんですよね。

私自身、為替ディーラー時代に日本人の集まりで交流があって切磋琢磨した思い出があるので、こういった交流を継承していければというのがあります。

お互いに情報交換をすることによって、刺激を受けながら成長していく場を設けていくことが大事だなと思います。

編集部:そうですね。僕も「円魔」の一人として、切磋琢磨しつつ成長していきたいと思います!今回もありがとうございました!

人のシルエット

今回のまとめ

  • 円魔にとってドル円にはホームの強みがある
  • 円魔の弱みは逆張り癖があること
  • 知恵と工夫で海外投機筋に対抗できる

この記事の執筆者

エフプロ編集長 齋藤直人

エフプロ編集長

齋藤直人

SAITO NAOTO

略歴

紙媒体で約20年の編集経験を積み、趣味系雑誌4誌の編集長を歴任。雑誌の特集記事だけでなく、企業とのタイアップ企画、地域活性化事業への参画など、コンテンツ制作力を活かして幅広いフィールドで活躍。国会議員、企業の重役、スポーツ選手、芸能人などジャンルを問わず幅広いインタビュー経験を持つ。現在は株式会社キュービックのエディターとして、エフプロを中心に記事クオリティ向上に尽力中。

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