リピート系、プログラム系、MT4…どの自動売買を選ぶ?
自動売買、あるいはシストレ(システムトレード)は、いくつかのカテゴリーに分類することができます。
特にリピート系とプログラム系は、売買が自動である点以外はかなり性質の異なるものです。
今回はそれに加え、MT4(MetaTrader4)というソフトを用いて行う自動売買も比較対象に加えてみます。
リピート系 | プログラム系 | MT4のEA運用 | |
---|---|---|---|
始めやすさのハードル | 〇 | ◎ | △ |
売買ロジックの透明性 | ◎ | △ | △ |
最低限必要な資金 | △ | ◎ | ◎ |
必要経費 | 投資資金以外には不要 | 投資資金以外には不要 | EA購入費用、VPSの使用料が発生 |
ITスキルの必要度 | 不必要 | 不必要 | MT4のセットアップ、VPSの設定など、一定の知識は必要 |
選択できる投資戦略の種類 | △ | ◎ | ◎ |
取引コスト | △ | △ | ◎ |
主な商品 | トラリピ(マネースクエア) トライオートFX(インヴァスト証券) ループイフダン(アイネット証券、ひまわり証券) iサイクル2取引(外為オンライン、ライブスター証券) トラッキングトレード(FXブロードネット) みんなのリピート注文(トレイダーズ証券) |
シストレ24(インヴァスト証券) みんなのシストレ(トレイダーズ証券) セントラルミラートレーダー(セントラル短資FX) macaso(エキサイトワン) |
GogoJungle、テラス、レッツリアルなどでEAを購入して運用 |
リピート系自動売買は難易度は低いものの資金力が求められる

リピート系とは、「相場の往復から利益を生み出す」タイプの自動売買で、元祖はマネースクエアのトラリピです。
上のイメージ図のように、設定範囲内を価格が行ったり来たりするたびに利益確定が発生します。
FX会社各社からいろいろなタイプのリピート系がリリースされていますが、どれも基本的な設計思想は同じです。
リピート系の運用では、これからの相場がどの水準を推移するかという見極めが必要です。
この相場観がある程度見えていないと、利益を出すことは難しいといえるでしょう。
というのも、リピート系は「この値幅分動いたら注文を入れる、利益を確定する」という売買ルールが事前にわかっているからです。
相場の予想と組み合わせることで、最大リスクも事前にわかります。
リピート系で一番難しいのは、おそらく資金管理でしょう。
等間隔に注文を敷き詰めるものなので、注文の密度が高いほど、あるいは注文あたりのロットが多いほど利益も多くなりますが、買い戦略なら下落、売り戦略なら上昇したときに含み損が拡大します。
口座がロスカットにならないためには、的確な値動きの予測ができるか、資金が豊富で一時的な含み損に耐えられるかのどちらかを満たしていなければいけません。
ただ、前者はプロでも難しいため、リピート系を安定して動かしながら満足できる利益を得続けるには、少なくとも数百万円の資金が必要といえるでしょう。
資金が少ないと、相場が逆行したときに口座が維持できなくなる可能性が増すか、あるいは注文がまばらで利益をあまり得られない状態になります。
逆に豊富な資金があれば、広大な範囲に注文をたくさん仕掛けられて、なおかつまず強制ロスカットにならない状態の運用をすることもできます。
プログラム系はマネジメント力が問われる
プログラム系の自動売買は、たくさんの種類がある売買戦略の中から自分が運用したいものを選んでポートフォリオを組み、運用することになります。
最大の特徴は、使っている側が売買戦略の中身を知ることができない点。
どういうロジックでトレードをしているか自体が商品なので、いわゆる企業秘密であるわけです。
よって、なぜ勝ったか、なぜ負けたかのちゃんとした理由はわかりません。
このあたりが、リピート系との一番の違いとなります。
売買は自動でやってくれますが、かといって放置していいかというとそうもいきません。
プログラム系の自動売買は、なんらかの分析によって環境認識をし、トレードのタイミングを計っているため、どうしてもそのときの相場と合う・合わないが出てきます。
つまり、「どんな相場でも安定して勝ち続けるプログラムはない」ということ。
よって、相場の展開と直近の売買成績を見ながら、調子の良いものを採用しつつ、調子の悪いものを休ませるといった、ポートフォリオ全体のマネジメント能力が問われます。
プログラム系の自動売買はまず間違いなく損切りもプログラムされているため、含み損をずっと抱え続けることはありません。
そのため10万円程度の資金でも、プログラムを動かしての自動売買運用が十分に可能です。
ランニングコストが安いMT4のEA運用
MT4という世界的に普及しているトレードプラットフォームを活用すると、EA(Expert Advisor)という売買ロジックが記載されたファイルを用いて、本格的な自動売買が行えます。
EAの自動売買は、すでに紹介したプログラム系の自動売買と基本的には同じです。
にもかかわらず、EAの自動売買を行うためには、EAファイルを入手(基本的には有料で購入)、標準的なスペックのパソコンを用意するか有料のVPS(ネット上で動く仮想のパソコン環境)で、MT4を稼働させなければいけません。
これまで紹介した2種類の自動売買と比べると、明らかにハードルもコストも高いです。
それにもかかわらず、なぜEAの自動売買が支持されているのかというと、取引コストが一番安いからです。
リピート系、プログラム系ともに、毎回のトレードにスプレッド以外の取引手数料が上乗せされています(スプレッドに含まれているケースもあります)。
それに対してMT4の場合、スプレッド以外の手数料はありません。
これは、売買成績そのものがプラスになりやすいことを意味します。
トレードごとに発生する手数料が安いため、「口座全体で利益を出しやすい」のです。
また、コストが安いからこそ、数pipsを狙うような薄利のロジックも成り立ちやすくなります。
この恩恵が特に大きいのは、数十万、数百万ロット単位で取引する大口投資家の場合。
ロット数が大きいほど取引手数料も大きくなるため、一律であるEA代金、VPS料金などを支払うだけで取引コストの圧縮が可能です。
リピート系の自動売買を徹底比較
それではここから、リピート系の各商品を比較していきましょう。
リピート系は、各社それぞれ特色はあるものの、すでに述べたとおり相場の往復を狙う売買であることは変わらないため、各スペックを比較しやすい面があります。
取引コストが一番安いのは?
裁量トレードではもっともメジャーで、自動売買でもトレードをしている人が多いドル円を、1万通貨取引する場合に発生するコストを調べてみましょう。
ドル円1万通貨の取引コストを各リピート系自動売買で比較
スプレッド | スプレッド以外の手数料 | 合計 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
トラリピ(マネースクエア) | 3.0pips | なし | 3.0pips | |
トライオートFX(インヴァスト証券) | 0.3pips | 往復2.0pips | 2.3pips | 手数料は、1万通貨未満で往復4.0pips、10万通貨以上で往復1.0pips、50万通貨以上で無料 |
ループイフダン(アイネット証券) | 2.0pips | なし | 2.0pips | |
ループイフダン(ひまわり証券) | 2.0pips | なし | 2.0pips | |
iサイクル2取引(外為オンライン) | 1.0pips | 往復4.0pips | 5.0pips(キャンペーン時3.0pips) | 手数料が往復2.0pipsになるキャンペーンを頻繁に開催 |
iサイクル2取引(ライブスター証券) | 0.9pips | 往復4.0pips | 4.9pips | 1万通貨取引が最小ロット |
みんなのリピート注文(トレイダーズ証券) | 1.9pips | なし | 1.9pips | みんなのシストレ内で選択 |
みんなのリピート注文、次いでループイフダンが低コスト
商品によって、スプレッドのみか、スプレッド+手数料の形態になるため、合計のスプレッドで判断すると、トレイダーズ証券のみんなのリピート注文が最安。
次いでアイネット証券、ひまわり証券のループイフダンとなります。
取引コストは安いに越したことはないため、リピート系の口座を選ぶにあたって重要な選択基準といえます。
表面からはわからないコストに要注意
スプレッドと手数料は確実に発生する取引コストですが、それ以外にスリッページや約定拒否などにより取引コストを支払うケースもあります。
これは使っているリピート系口座の約定力に依存する部分であり、プログラム系やMT4のEA運用とも共通する要素です。
約定力が問われるのは、相場が激しく動いているとき。
記憶に新しい2020年3月の新型コロナ相場では、どの通貨ペアも日々乱高下しました。
また要人発言や金融政策が発表されたタイミングでも瞬間的な値動きが発生しました。
こういった局面で、本来の利確幅より狭く利食いしたり、損切り幅より広く損切りしたり、あるいは約定するはずの注文が約定しないといった現象が見られることがあります。
後から振り返ることでしかわかりませんが、チャートと取引履歴を見比べて、あらかじめ出されていた注文がちゃんと通っているかどうかを確認してみてください。
トレードできる通貨ペア数が一番多いのは?
通貨ペア数 | 取り扱いマイナー通貨ペア | |
---|---|---|
トラリピ(マネースクエア) | 13 | トルコリラ円、南アランド円、メキシコペソ円 |
トライオートFX(インヴァスト証券) | 17 | トルコリラ円、豪ドルNZドル |
ループイフダン(アイネット証券) | 20 | トルコリラ円、南アランド円、メキシコペソ円、豪ドルNZドル、米ドルカナダドル |
ループイフダン(ひまわり証券) | 5 | |
iサイクル2取引(外為オンライン) | 26 | 米ドルカナダドル、ユーロカナダドル、ユーロNZドル、ポンド豪ドル、ポンドNZドル、ポンドスイスフラン、豪ドルNZドル、南アランド円、トルコリラ円、メキシコペソ円 |
iサイクル2取引(ライブスター証券) | 24 | 南アランド円、米ドルカナダドル、ユーロカナダドル、ユーロNZドル、ポンド豪ドル、ポンドNZドル、ポンドスイスフラン、豪ドルNZドル |
みんなのリピート注文(トレイダーズ証券) | 13 | ポーランドズロチ円、中国人民元円、トルコリラ円、メキシコペソ円、南アランド円、豪ドルNZドル |
ドル円、ユーロドル、ポンド円、ユーロ円、豪ドル円といったメジャーな通貨ペアは、どこでも取り扱いがあります。
高金利通貨ペア3兄弟ともいうべき、トルコリラ円、南アランド円、メキシコペソ円も、多くのリピート系口座で取り扱いがあります。
おもしろいところを挙げるなら、iサイクル2取引の2社。
ユーロやポンドと、豪ドル、NZドルといったオセアニア通貨の組み合わせでリピート系運用ができます。
またトレイダーズ証券のみんなのリピート注文では、ポーランドズロチ円、中国人民元円といった珍しい通貨ペアがトレードできます。
一番操作がシンプルで初心者向きなのは?
みんなのリピート注文、ループイフダンがシンプル
この項目はある程度筆者の主観が入りますが、初心者が悩んだりとまどったりする要素の少ないリピート系自動売買は、トレイダーズ証券のみんなのリピート注文だと思います。
なぜなら、みんなのリピート注文の設定が非常にシンプルだから。
通貨ペア数こそは13種類となかなか豊富ですが、通貨ペアごとに「買いか売りか」と、「取引ロット数」を選ぶ以外の設定はありません。
リピート系の場合、「どれくらいの値幅で注文を設置するのか」「どれくらいの値幅で利食いするのか」という設定が必要になり、この部分がリスクとリターンに大きく影響します。
ですが、みんなのリピート注文の場合、通貨ペアごとにこの2つが最初から固定されているため、通貨ペアとロット数を選ぶだけで自動売買がすぐに始まります。
その次にシンプルなのがループイフダン。
通貨ペアとロット数、それと「注文設置間隔=利食い幅」を、もともと用意されている4~5種類から選択するだけでOKです(実際はこれら設定を1つずつ選ぶのではなく、プリセットになっているものから選ぶだけです)。
難しいものの方が自由度が高い
逆にトラリピは、さまざまな項目をすべて自分で決められます。
そのため初心者には少し大変かもしれませんが、その分トレードの自由度は非常に高く、例えば狭い範囲に注文をたくさん敷き詰めて攻撃的にしたり、広い範囲に少しだけ注文を配置してじっくり運用したり、買いと売りを混在させたりといった、幅広い戦略が考えれます。
同様にトライオートFXは、自分でリピート系運用を構築できる「ビルダー」というサービスが利用できます。
初心者向けではありませんが、自動売買にかなり慣れている人なら自分だけの個性的な運用ができるでしょう。
プログラム系自動売買を徹底比較
どのプログラムを選んで運用できる?
選べるもの | 特色 | |
---|---|---|
みんなのシストレ(トレイダーズ証券) | プログラム(リピート系含む) トレーダー(個人・法人) |
みんなのシストレを運用している人(セレクター)の上位成績者のポートフォリオを参考にできる |
シストレ24(インヴァスト証券) | プログラム | ミラートレーダー+インヴァスト証券オリジナルのプログラムを、様々な条件でソート可能 |
セントラルミラートレーダー(セントラル短資FX) | プログラム | 厳選されたプログラムから運用するものを選択。毎週運用プログラムの詳細な取引レポートがメール送信される |
macaso(エキサイトワン) | トレーダー | 全世界の3万人のトレーダーから選抜された約100人の投資戦略を自分の口座で再現 |
シストレ24とセントラルミラートレーダーではプログラムを、macasoではトレーダー(生身の成績が良い登録トレーダーの取引結果を再現できる)を、みんなのシストレでは両方を選択できます。
どういうロジックでトレードをするか、利用する側がすべてわからない点は、プログラムもトレーダーも同様です。
また、どんな相場でもコンスタントに勝ち続けることはまず無理であるところも同じです。
多かれ少なかれ、得手不得手があるものです。
ただこの「得手不得手」の振れ幅は、プログラムよりトレーダーの方が大きい印象。
人間には対応力がありますが、同時にメンタルの影響も受けます。
そのため大相場では、その個人の才覚で立ち回るため、より大きく勝ったり、より大きく負けたりというように、結果の振れ幅が大きくなると予想できます。
どちらにせよ、常に複数のプログラム、トレーダーをチェックし、今の相場とかみ合っているものを優先的に起用するようにしてください。
自動売買だからといって、完全に放置することはできません。
EAをはじめとする自動売買の注意点
自動売買は元本や利益を保証するものではなく、裁量取引同様、相場変動等により損失が生じる場合があります。
特に自動売買は急な相場変動に対応できないケースがありますので注意が必要です。
また自動売買ソフトの中には高利回りを謳った、詐欺に該当する商品が市場に出回ることがあります。
自動売買ソフトご購入の際は十分に注意して購入するようにしてください。
この記事のまとめ
自動売買と一口に言ってもいくつかのジャンルがあるため、まずはリピート系・プログラム系・MT4のメリットやデメリットを見たうえで、どの方向の運用をするかを決めましょう。
また、裁量トレードと自動売買の比較も大切です。
以下の記事では、裁量・リピート系・プログラム系を比べていますので、こちらも意識してみてください。