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茨城大学鈴木教授に聞く!ゴトー日の仲値トレードはどうすべき?統計データからわかるアノマリー検証

「仲値トレード」という、古くから知られている日本固有のアノマリーを利用したトレード手法があります。

このトレード手法について、茨城大学の鈴木智也教授に、研究データを基に解説していただきました。

お話をうかがった人

茨城大学鈴木智也教授

茨城大学大学院 理工学研究科 機械システム工学領域

鈴木智也 教授

SUZUKI TOMOYA

略歴

物理学で博士号を取得後、東京電機大学助手、同志社大学講師、茨城大学准教授を経て、2016年より同大学教授。
データサイエンスや機械学習によるビジネス利活用を研究テーマとし、その社会実装として自社ベンチャー代表取締役や大手アセットマネジメント特任研究員を兼務。
テクニカル分析では国際最高資格 (MFTA) やジョン・ブルックス賞を受賞し、講演・執筆活動も精力的に取り組む。

『茨城大学 鈴木研究室』のHPはこちら
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輸出と輸入の偏りで生まれるゴトー日アノマリー

-そもそも仲値、そしてゴトー日とは一体なんなのでしょうか。

鈴木:まず、日本の銀行の習慣というか仕組みとして、毎朝9時55分にその日に決済するための対顧客レートを決定します。これが仲値と呼ばれるもので、今の三菱UFJ銀行、旧東京銀行のレートが基準になります。仲値という名前通り、売値と買値の中間の価格となります。

ゴトー日とは、日本に古くからある商習慣で、江戸時代には末尾が5と0の日に代金の決済がよく行われました。

それで輸入企業の決済がゴトー日に偏る傾向があります。日本企業が商品などを海外から購入した代金を、5や0がつく日に支払うことが多いのです。逆に輸出の場合、海外にはゴトー日のような習慣はないので、日本の企業に代金を支払ってくれるタイミングはバラバラです。

日本企業が、決済のときにどういった通貨を使うのかというデータがあります。ゴトー日に影響がある輸入企業の場合、外貨だと圧倒的に基軸通貨である米ドルが多いです。次いでユーロですね。

日本企業が決済で使う通貨のデータ(出典)財務省関税局ホームページ

(出典)財務省関税局ホームページ

つまり、輸入と輸出の決済タイミングの非対称性により、ゴトー日にドルやユーロを買い、円を売るアノマリーがあることになります。そしてそのタイミングは、銀行がその日の決済レートを決定する9時55分が終点になります。

-アノマリーというと、本来は「根拠はないけど、存在するといわれている法則」のような意味合いです。でも今回のお話には根拠がありますよね。

鈴木:根拠として妥当だと思いますが、あくまで仮説なのでアノマリーと呼んでいます。しかし統計的な分析からも説明できるので、演繹的にも帰納的にも妥当な説なのではないかと思います。

ゴトー日の仲値トレードが効果的と考えられる時間帯

-FXの世界では、よく月末ゴトー日というように、ゴトー日と月末をセットにして呼ぶことが多いと思います。同様の傾向は月末にもあるのですか?

鈴木:どちらかというと、月末よりも金曜日、週末の方がこの傾向は強く出ると思われます。だから、金曜日とゴトー日が重複するタイミングが狙い目になったりします。なお月末がゴトー日と重なるタイミングだとデータ数が非常に少なく、統計的な調査がしにくいという事情もありますが。

金曜日かつゴトー日(出典)茨城大学鈴木研究室

(出典)茨城大学鈴木研究室

こちらはユーロ円、ドル円の検証データです。一番左の時間は、エントリーと決済のタイミングです。14~10時なら、ゴトー日前日の14時に買い、仲値の少し後のタイミングである10時に決済をしています。表の中の小数点以下の数値は上昇率で、0.5=50%となります。つまり0.5より多ければ、仲値に向かって上昇していることになります。またセルの色は、黄色が4つの日の中で一番効果的なタイミングということになります。

こうして見てみると、だいたいの時間帯では、金曜日&ゴトー日に上昇したケースが多かったです。ドル円の金曜日&ゴトー日で、深夜の3時、あるいは4時にロングをするパターンだと65.3%とかなりの数値になります。普通の金曜日というだけでもけっこう良好な結果ですよね。

-仲値トレードというと、9時55分の少し前、日本時間の朝の8時、9時くらいにロングで入るイメージがありました。

鈴木:直前でのポジション保有はちょっと危険な面があります。その時間帯の銀行は、仲値に向けて輸入企業のドル・ユーロ買い、円売りポジションのカバー取引を盛んに行っています。カバー取引とは、顧客から受けている注文の逆側のポジションを持ち、保有ポジションを調整することです。ゴトー日に仲値に向かう時間帯なら、ドル円やユーロ円の買いポジションをカバーするための、ドル円やユーロ円の売りポジションをどんどん増やしているため、価格が不安定になります。

-当日朝は、ポジションを持つにはもう遅いということなんですね。

鈴木:この影響もあって、仲値を狙ったポジション保有のタイミングがどんどん早くなっている傾向があります。

ただ早めるにも限界があって、ロンドン市場が開いている時間帯(日本時間の24時くらい)にはポジションを持つのも危険です。またロンドンの後半はNY市場とも重なっています。それで、どの時間帯に買いを入れるのかが効果的かを統計的に調べたところ、前述の午前3時、午前4時の時間帯からの売買が良かったということになるわけです。

ゴトー日のアノマリーが簡単に消滅しない理由

-銀行のカバー取引について詳しく教えてください。

鈴木:お客さんの注文を、銀行は代理で処理しないといけません。9時55分にその日のレートが決まりますから、それまでに貯まっているポジションを処理します。それがだいたい銀行のディーラーの方が出勤する朝の8時くらいからですかね。ちょっとくらい良くないレートでもこのカバー取引をしなければいけませんから、個人投資家にとっては高値つかみになりやすい時間帯です。

【時間的考察】投資家らの先回り行動(出典)茨城大学鈴木研究室

(出典)茨城大学鈴木研究室

こちらが仲値に向けたリスクの変化イメージです。カバー取引が激化する日本時間朝はリスキーです。さらに9時に日本株の寄り付きがあります。ここでもボラティリティが上がるため、株と為替が連動することもあり、トレードの判断はむずかしい時間帯といえます。

あと、このアノマリーを知っている人は、国内外問わずたくさんいると思います。そうなると、知っている人の間でどんどんエントリーが先に先にとなっていきます。となると朝の8時には、既に仲値の大半が決まっている可能性があります。ただ、先ほども申し上げたように、ロンドン市場とNY市場が重なる時間帯にポジションを持つことも不安定であり、結果として午前3時~4時くらいに優位性があります。

運用パフォーマンスの評価(出典)財務省関税局ホームページ

(出典)茨城大学鈴木研究室

こちらのユーロ円のプロフィットファクターを見ても、やはり夜中の1時(9時間前)、2時(8時間前)のエントリーが効果的という結果でした。プロフィットファクターとは、総利益÷総損失で求められる値で、1より大きければ運用全体がプラス収支です。日本時間の夜中が1.5くらいあって、効果的ですね。

-ユーロ円もドル円と同じ傾向があるわけですね。

鈴木:はい。ちなみに、非合理的なアノマリーというものは一種のバブル現象なので、いずれ使えなくなるんです。広く知れ渡ると、同じことを多くの投資家がやり始めます。そうなるとどんどん利益確定が早くなり、いずれは有効時間がゼロになります。そうなるとそのアノマリーは消滅して、使えなくなります。この早期化にはエントリータイミングも該当し、特にテクニカル分析などのトレンドを追う戦略も情報の先取り合戦になります。究極はインサイダー情報ですが、最近はHFTやAIのように機械を使った情報の先取り合戦が加速しています。つまり個人投資家にとって、勝負は気づかぬ間にか始まり、すぐに利益確定されて終わっている可能性があります。

しかし幸いにも、ゴトー日のアノマリーは、スタートもゴールも時間で固定されているので、この法則が当てはまりません。スタートはロンドン市場が開いている時間にまでは食い込みませんし、ゴールは必ず仲値が決まる9時55分です。なので、これだけ知られていて、昔からあるアノマリーなのになかなかなくなりませんし、今後もそう簡単には消滅しないと思います。

もちろん、日本企業がゴトー日や金曜日に決済するという商習慣をやめたら、このアノマリーは使えなくなりますが。ゴトー日の仲値トレードのプロフィットファクターが1を超えるということは、決済の資金調達を割高なコストで行っていることになります。

-私たちトレーダーは、そのアノマリーを利用してトレードを行うと効果的というわけですね。

鈴木:そういうことですね。

ドテン売りはゴトー日に関係なし

-通貨ペアはドル円がベストですか?

鈴木:ユーロ円も悪くないですよ。ただ安定しているのはドル円です。

-ゴトー日のトレードがやりやすいFX口座はあるのでしょうか?

鈴木:やはりスプレッドはコストですから、狭いに越したことはありません。ただ仲値のトレードは売買する時間が決まっています。エントリーをする日本時間の深夜、決済をする9時55分付近にスプレッドが広がらず、またスリッページしない口座が良いでしょう。

-仲値のトレードは、9時55分に買いポジションを決済しますよね。そこから逆方向の売り戦略に優位性はあるのでしょうか。

鈴木:ドテン売買ですね。それも調べてみたのですが、明確な傾向は出なかったです。というか、ゴトー日や週末に限らず、10時からドル円を売るだけで、全体的な収支はプラスでした。株式の日本市場がオープンしていますから、輸出業者が獲得外貨を円に両替する動きや、外国人投資家が外貨を円に換えて日本株を買う動きなどが考えられます。

-最後に、この記事を読み、仲値トレードに挑戦する読者の方に、アドバイスなどあればお願いします。

鈴木:あくまでも統計的なデータに基づく手法なので、たくさんトライをしないとなかなか報われることはないと思います。

-1回や2回のトレードで利益を出すわけではなく、何回もチャレンジして、トータルでお金が増えていればOKというスタンスですね。

鈴木:短期間での利益を狙うものではなく、長期で数十%増えれば御の字です。私たちの検証でも、10年間やり続けて30%くらいの利益です。レバレッジをきかせすぎて、破産をしないように気を付けてください。

まとめ

非常に有名なアノマリー系のトレード手法である仲値トレードがなぜ存在するのか、どういうトレードをするべきかという非常に興味深いお話でした。たしかに週末とゴトー日が重複するタイミングでのドルやユーロの買いには優位性がありそうです。

ただ、あくまでそういった傾向があるというだけであり、資産の大半をつぎ込むような強引なトレードは危険です。記事内にもあるように長期的な視野で、焦らず現実的な資金でトレードをするようにしましょう。

この記事の執筆者

鹿内武蔵

FXライター

鹿内武蔵

SHIKAUCHI MUSASHI

略歴

国内唯一の月刊FX情報誌、FX攻略.comの元副編集長として、2008年の創刊時より取材・編集・執筆に携わる。多くの勝ち組トレーダーや証券会社を取材してきた経験を活かし、FXが国民的投資になることを目標に活動中。各種メディアでの執筆の他、トレーダーとしてFXの運用も行っている。

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